二十一話『遺産』
これは過去。舞台は、旅先。当時十四歳だった俺は、幼馴染のサユリと旅行に行けるだけで、喜ばしい事だった。なのに。「カガミ!!! 俺を忘れるな~~!」せっかくの俺とサユリのイチャイチャラブラブデートだってのに。「邪魔だなぁ、」俺が冷たくヒロムに言うと、サユリは「お友達にそんな事言わない、」と俺の頭を優しく叩いた。「うん、」俺は素直に頷き、一歩先を歩き出す。「ごめんサユリ、私まで来て良かったの?」首を傾げるミサに、サユリは「当然よ、だってこれは友達同士で行く旅行。デートじゃないんだから、」と微笑む。俺はサユリに誘われただけで完全なデートを想像していたものだから、ガッカリ。って言葉が真っ先に浮かぶ。でも、せっかくの旅行だ。楽しまないと損だろう。
一歩先を歩く俺を追いかけ、ヒロムが「カガミ~!!」と後ろから抱き着く。「辞めろ、近い!」俺が嫌がるような素振りを見せてもヒロムは、「だって旅行だぜ~??? しかも女子が二人。何も起こらないはずは無く……」と俺にさっさと行動を起こせと言わんばかりに揶揄う。「何も起こらないよ、バカ。」俺が冷静にヒロムに言うと、ヒロムは「なんか俺に当たり強くない!? カガミくぅーん、」とショックを受けたような表情を浮かべる。そんなヒロムを見て、サユリとミサはクスクスと微笑んだ。「ねぇ、カガミとヒロムくんって性格真逆なのに一緒にいて楽しそうだよね」俺とヒロムの様子を見ながらミサが言うと、ヒロムは「おうよ!!!」と答える。「カガミは俺の親友だぜ???? 幼稚園の頃にこいつと出会ったんだけどなぁ、あれ、思い返せばあの頃からサユリちゃん一筋……恋愛相談された事も」
ヒロムは顎に手を当てて考え込む。「言うな言うな!!!!!」俺は頬を赤らめながらその先を遮るが、ヒロムは「あっれぇ弐式さん照れちゃったんですか~~? 可愛い~??? ほーら!!!」と、サユリのほうに俺の身体を押し出す。俺はサユリの近くに飛ばされる。サユリはそんな俺を抱き締めた。途端、心臓が急激に高鳴り、「ごめっ!!」と謝りながらサユリから離れる。ミサは俺に、「普通カガミくんが抱き締めるほうじゃない?」と言うが、サユリは「なんか可愛くてぬいぐるみさんみたいだったからつい」と照れ臭そうに笑った。「お似合いカップルだな本当に!!!!」自分ごとのように嬉しそうなヒロム。まだ、付き合ってないんだけど。だがミサも、「でも、サユリとカガミくんが本当に付き合ったら面白いかもね!!!」と俺とサユリの顔を覗き込む。
「な、なんで」俺がミサに問いかけると、「片や警察官をお父様に持つエリート家系生まれの王子様~! 片や成績優秀で我が中学校美少女ランキング1位のお姫様~!」とミサは興奮しながら言った。ヒロムは、「羨ましいぞ、カガミ。サユリちゃんなんて誰が狙ってるかわからないのに、! 今のままでいいのかぁ!?!? お前がサユリちゃん大好きなのはバレバレなんだぞぉ!!」と俺の身体を揺さぶりながら感情的に訴える。「待て待て待て、まだ俺はサユリと付き合ってなんか!!!!」俺は赤面し慌てながらヒロムの言葉を否定するが、ミサは「うっわ照れてる」と俺の様子を見て楽しそうな表情を浮かべていた。「良かったじゃないサユリ、あれが未来の旦那さんよ」ミサの言葉に、サユリは「うふふ、」と嬉しそうに微笑む。「あー、サユリもカガミくん好きなんだ」ミサが揶揄うとサユリは、「違う違う、あいつはただの幼馴染。何故かずっと一緒にいただけよ」と誤魔化した。
ヒロムは、「嘘つくなサユリィィィィ!!!」と少し遠くからサユリに叫ぶ。サユリは、「嘘じゃないわよ!!!!!」とヒロムに言い返す。ヒロムは並んで歩いていた俺に、「ただの幼馴染だってさ」と言うが、俺は「照れ隠ししてるだけだよ」と信じようとしない。「カガミってサユリちゃん以外の何が好きなの? そういえばお前って昔からあまり好きそうなものないよな」歩きながらヒロムは考える。唐突に問われた好きな物。と言う難題に俺はサユリ。以外の答えが見つからない。「うーん……」と真剣に考える俺に、ヒロムは「ぇえ!? 好きなもの聞いただけだぞ!?」と驚く。「戦隊もの……かな」少し恥じらいながら言った俺の答えをヒロムは「あら旦那様ひょっとして正義のヒーローに憧れちゃったりして」と面白がる。「でもそうだよな。考えてみれば、お前はずっと変身アイテムとか集めてたよな、」と納得するヒロム。「まさか今も?」とヒロムは俺を見る。俺は小さく頷いた。中学生になってまで特撮ヒーローを卒業出来ていない俺はやはりまだ幼いのだろうか? そんなことを考えたが、ヒロムは、「ははっ、可愛いとこあるじゃん」と俺の肩を抱き寄せる。「だから距離感おかしいってお前」俺がヒロムにジト目を向けると同時に、ミサが「野郎共、旅先だからってイチャイチャしない!!!」と注意する。「なんだか妬けちゃうな」とサユリ。その言葉を聞いた途端、俺はヒロムを突き飛ばし、「サユリ~!!! 誤解するな、俺にそんな趣味はないから!」と焦りながらサユリがいるほうへ戻る。「ちょっと!? 俺を置いていくのかカガミ!!!!」ヒロムもみんながいるほうへ戻ろうと走る。平和だな。当時の俺の顔には何も意図せず、自然と笑みが溢れていた。




