表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺にラブコメはまだ早かった!!~運命に振り回された俺の青春を返してくれ~』【俺ラブ】  作者: ミタラリアット


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/14

十話『暖かな』


 ミサを叩くと、ユリカは「!?」と驚いたようにこちらを見る。


 「弐式くんサイッテー!」後ろにいた女子生徒たちは今度は俺を責める。


 「ユリカが何をしたって言うんだ。」俺はミサを睨みつけた。


 「何をした?私が気に入らない人間は排除するのが当然じゃなーい。弐式くんはいい子だから分からないか、」


 その廊下をスクールバッグを持って横切るサユリ。


 「サユリ、お前からもなにか言ってやってくれ」俺がサユリに言うと、サユリは、「へ?」と目をパチパチとさせる。


 「サユリ。サユリって弐式くんと付き合ってるんだよね??」ミサはサユリに言う。


 「ぇ、ぁ、うん。」サユリは少し戸惑いながら俺の方を見る。


 「じゃあ弐式くんが虐められたら嫌よね??嫌ならユリカをここで見捨てなさい、」ミサはサユリに言った。


 サユリは、「わ、私…!」と震えた目でミサを見上げる。


 「何を今更いい子ぶっちゃってるわけぇ??」ミサはサユリを見下す。


 「でも…!!!辞めて…!」サユリはそう言うと、ユリカの手を引っ張りながら逃げる。


 俺もカバンを取りに行き、サユリを追いかける。


 ミサは「つまんなぁい。」と口を尖らせた。


 


 正門前。


 「なんの真似ですか…!?」サユリを見て怯えたような表情を浮かべるユリカ。


 サユリは、「なんの真似って、あなたを助けに…」とユリカの両肩に手を置く。


 「ふざけないで!!!あなたたちみたいな人なんかと関わりたくない!!!!」ユリカは声を荒らげ、バタバタと走っていった。


 「助けたのになんだその言い分は…」俺は遠くなったユリカの背中を見ながら呟く。


 サユリは、「…」と少し陰のある表情を浮かべる。


 「サユリ?」俺はサユリの顔を覗き込む。


 サユリは、「ごめん、言われた事、ちょっと刺さっちゃったみたい」と乾いた笑みを混ぜる。


 俺は、「お互いきっと疲れてるんだ。」サユリに言っては、片手を差し出す。


 恋人繋ぎ。


 でも今までの恋人繋ぎとは違う。この恋人繋ぎは、誰かの犠牲の上で成り立っているんだ。


 


 帰り道を歩いていると、昨夜俺が女性を殺した。電柱の前を通る。そこには花束と飲み物が添えられていた。


 「ここで事件があったのよね…」ボーっとお供え物を見ていると、またもや花を持ったメガネでポニーテールの女性と黒髪ショートカットの女性がやってくる。


 「ニナ、あんなに子供に人気だったのにね」花束を置き、手を合わせるポニーテールの女性。


 「警察は他殺の線で見ているらしいけど…」ショートカットの女性も、涙を堪えながら手を合わせる。


 「…子供たちのメンタルは…どうなるんだろう…」


 「今朝、泣いている子もいたらしいわ」


 


 遠くから女性たちの会話を聞いて、俺はスクールバッグを落とす。


 「カガミ??」サユリは俺に視線を向ける。


 「ぁ…あ…」


 全身が震えて、足に力が入らない。視界がチカチカして、殺した瞬間の映像を何度も再生する。


 「死…死んで…死んだ…ここで…」


 パニック状態になる俺。カバンも持たずに家まで逃げるように走る。


 「ちょっ、カバン!!!!カガミ!!!!!」サユリが俺を追いかける。


 


 家の扉を豪快に開けると、足音を鳴らしながら階段を駆け上がる。


 母さんは、「カガミ今日はお疲…」と言いかけるが、完全に無視する。


 「ごめんなさい!!!」サユリが母さんに謝りながら俺の後を追い、二人分のカバンを持ちながら階段を駆け上がる。


 「ぇ、な、なに…。」母さんはその様子を見て俺の知らないところで呟いた。


 


 「カガミ、大丈夫!?カガミ、」体育座りで過呼吸気味になる俺を見て、サユリは叫ぶ。


 「もう放っておいてくれ!!!!!!!!!」俺が怒鳴ると、サユリは「で、でも…!」と心配してその場から離れない。


 なぜだ、なぜ俺がここまで言ってるのに離れようとしない。


 


 「カガミ、汗出てる…タオルとお水とってくるから!」


 サユリは階段を駆け下り、何やら母さんと話す。


 俺が頭を掻き回したりしている間に、サユリは言った通り、タオルと水を持ってきた。


 


 「ねぇ、汗拭い…」


 俺は差し出されたそれらを、「うわぁぁぁぁ!!!」と叫びながら弾き飛ばす。


 服に水がかかりびしょ濡れになるサユリ。


 「…どうして…?」サユリは目に涙を溜める。


 俺は「ぁ……」と怯えるような視線をサユリに向ける。


 


 「大丈夫、大丈夫だから。私、カガミが落ち着くまで待つから。」


 サユリは優しく声をかけて俺の部屋からいなくなる。


 


 俺は両手で頭を抱えた。


 『ニナ先生を返してよ』『僕らの先生だったのに!!!』


 頭の中で、子供たちの声がザワザワと響く。


 「辞めろ…辞めろ…」俺は途切れ途切れに呟いた。


 瞳が震える。


 


 突如脳に映し出された映像は、今朝の小学校。


 『うわぁぁぁぁ!!!』『ニナ先生…ニナ先生がぁぁぁぁ…』『なんでッ…なんでッ…』


 担任の訃報を聞いて、泣き出す子供たち。


 その映像は何度も繰り返される。


 


「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんな……」


 ただ涙がダラダラと零れる。


 本格的に精神状態がおかしくなってきてしまったのだろう。


 頭に霧がかかったような感覚を覚える。


 


 まっすぐ前を見ると、人影がひとつ。


 『なんで……?』


 昨晩、俺が殺した女性が泣いていた。


 


 「うッ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」俺が叫ぶと、その幻覚も消える。


 


 「どうしたの!?」サユリが焦って部屋の扉を開ける。


 俺はサユリに抱き着いた。


 「ぅ"ぅぅぅぅ……」呻き声を上げながらサユリに安心を求め泣き叫ぶ。


 サユリは、「大丈夫だよ」と微笑んだ。


 


 サユリその暖かな感触に心が落ち着く。


 嗚呼…この人だけは。この人だけは絶対に失ってはならないんだと。俺は強く思った。


 


 「サユリ…好き…」俺はサユリにしがみつく。何があろうと、誰を敵にしようと。俺はサユリを守りたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ