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中編



 あれから、なんだかんだ週末は異世界に来ている。


 人の役に立ってるのがなんだか嬉しかったし、まぁ、元々休日に予定を入れるタイプでもなかったので、暇だったこともある。

 食事付きだし、お祈りのお礼に野菜をもらって帰っている。食費助かってる。


 最近はアルベルトだけでなく、色んな人たちに聖女様凄い凄い! と褒められて嬉しい。


 今日も新顔のイケメンがいた。多分二十代、私と同じ歳くらいのやたらキラキラしてる金髪の美丈夫で、目が合うとちょっと恥ずかしい。


「聖女様の力は素晴らしいな」

「いえいえ、そんなー」

「いや、自信をもってくれ。あなたの祈りでこの国が救われている」


 瘴気を払うようになって、病気の人が減って作物もよく育つらしい。大聖堂から外に出ることがほとんどないので外がどうなってるかは知らないけど、役立っているようで良かった。


「しかも聖女様はこんなに素敵な女性だ。もう決まった人はいるのだろうか?」

「えーっ! いないですよー。モテないですもん」


 いたらこっちに来てないよ。ちょっと悲しくなっていじけていると、アルベルトがまぁまぁと頭を撫でてくれた。


「リナ様は私にモテモテなので大丈夫ですよ」

「そうですか」

「そうですよ。私の言うことが信じられませんか?」


 信じられないですねー。いつも適当なこと言いやがって、この色男。ケッと心の中で悪態をついておいた。


「では私は帰るよ」

「お気をつけてお帰りください、殿下」


 殿下?


 イケメンは颯爽と帰っていく。

 殿下なの?


「殿下なんですか?」

「殿下ですよ。この国の第一王子です」


 教えといてよ! なんで帰る間際に言うのよ! うっかり不敬な態度とってたらどうするのよ!

 イーッ!となっていると、アルベルトは何か問題でも?といった顔で私を見てきた。

 顔が良い。もうほんとヤダこの人。


「そう言ったことは心の準備がしたいので教えておいて欲しいです」

「そうですか? リナ様ならいつ誰の前に出しても恥ずかしくないと思ったのですが」

「……そうですか」


 多分次に偉いさんが来ても教えてくれないと思う。


「さぁ、リナ様、お祈りしましょうか」

「はーい……」


 とぼとぼと祭壇に向かって手を合わせて祈る。この国の人たちが幸せいっぱいでありますように! あと、アルベルトがもう少し空気読んでくれますように!


「さて、リナ様。これからどうしましょう」

「どうしましょうとは?」

「お祈りが終わって時間も出来たことですし、何かしたいことはありますか?」


 こんな申し出初めてだ。えーっ、したいことなんていっぱいあるし、どうしよう。扉から離れるのはちょっと不安だけど勇気を出して言ってみようかな。


「外を見に行ってみたいです。出来たらお店とか見てまわりたいかな?」

「わかりました。では着替えてきますね。リナ様の服も用意しますので、ここで待っていてください」


 決断が早い。アルベルトがさっさと奥に引っ込んで、たいした時間が経たないうちに着替えて出てきた。手には私が着る町の娘風ワンピースがある。この短時間でどこから手に入れたのだろう。

 特に何も聞かずに服を受け取り、家に戻って着替えて出てくる。


 アルベルトもいつもの神官服ではなく、町の青年風の服装で新鮮だ。長い髪は後ろでひとつに縛ってある。めっちゃカッコいい。綺麗。ビューティフル。賛美の言葉しか思い浮かばない。


「では、行きましょうか」


 そう言ってアルベルトが私と手を繋いだ。恋人繋ぎというやつだ。

 なんで? なんでそんな繋ぎ方するの? 今までは普通に手を引いてたじゃん。いや、迷子を心配してくれてるのかもだけど、恋人繋ぎじゃなくて良くない?

 今まで恋人が出来たことがないから、こんなこと初めてだ。


 緊張して手汗がすごい。心臓の音が聞こえてしまうかもしれない。


「ア、アルベルト様。手、この繋ぎ方、ね、危険じゃないですか?」

「手を離す方が危険です。ちゃんと繋いでいてください」


 私の心臓が危険なんだって! 止まったらどうするよ。でもアルベルトは離してくれなくて、そのまま私たちは街を見てまわった。


 初めて見る街はとても活気があって楽しい。だいぶ歩きまわったので、途中海の見える公園でひと休みする。


「活気ありましたね」

「リナ様のおかげです」

「そうだったら嬉しいです」

「えぇ、存分に喜んでください。あなたが来てくださって良かった」


 見惚れるような微笑みでアルベルトは言う。


 「ありがとうございます、リナ様」


 そう言ってアルベルトは、優しく私の手を取り、手のひらを口元に引き寄せて口付けをした。

 胸が熱くなる。心がときめく。これはダメだ。


「帰りましょうか」

「……はい」


 何事もなかったかのようにアルベルトがまた恋人繋ぎをして歩き始めた。


 ダメだと思ってるんだけどなぁ。多分もう無理だなぁ。そんなことを考えながら私たちは大聖堂へ向かった。




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