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浅はかな者達part4

浅はかな者達が辿る末路

チクショー!!!


俺は叫び声をあげた。


外れた馬券を握りしめて、クシャクシャにして宙に投げた。


ド本命が外れたのだ。


敗れたド本命にあらん限りの罵詈雑言を喚き、


残された小銭でビールを買って飲んだ。


腹の虫が収まらない。


こうなったら・・・


俺は思い立ってすぐに、あるとこに電話を掛ける。


闇金だ。俺はもう表の方ではブラックリストに入っているので、


どこからも借りることはできない。


借りれるのは裏の方。まともではない方だけだ。


金利を聞いたら普通の人間なら裸足で逃げ出すだろう。


だが、俺は、裏の方で莫大な借金を抱えたこともあるが、


競馬で大穴を当てて、一度は莫大な借金をチャラにしたことがあった。


一度完済をしているので、あのころに比べれば、


現在は、そこまでの借り入れにはなっていない。


いつもの闇金の担当者にすぐに繋がった。


すぐに金を取りに行くことを伝える。


相手も待っていると返事をした。


闇金のある街まで行き、事務所の中に入る。


いつもとは雰囲気が違っており、


真ん中の統括責任者と呼ばれる男が、いつもの男ではなかった。


正直、見た目は普通のおっさんだ。


前の奴の方が若かったし、厳つくてビビったものだ。


おっさんは俺に挨拶をした。


礼儀正しいが、やはりどこか冷たさを感じる視線で俺を見る。


それから、営業用スマイルといった感じで笑った。


俺が一度完済したことを褒めながら、現金を渡してきた。


俺は礼を言って、現金をもらってすぐに事務所を出た。


あんなところには一秒だって長く居たくは無い。


さて、また競馬場に戻るのは面倒だ。


とりあえず、今日はスロットで良いか。


まずは家のある駅まで戻り、コンビニでおにぎりを買った。


移動中にメシを済ませてしまうのだ。


俺は家の近くのパチンコ屋に入った。


まあまあ繁盛している店で、客付きはかなり良い。


評判も高い店だ。


もちろん、何の策も無しに台には座らない。


空いている台を調べ、打てそうな台を探した。


店を一周して、これなら打てるかなという台に座った。


そして、この選択が見事に当たった。


俺の台は爆発し、連チャンが止まらなかった。


結果、大勝を収めた。


翌日、俺はすぐに借りた分の金を闇金に色を付けて返した。


色を付けたと言っても、借金の元金が少しばかり減っただけだが、


責任者の男はこれまた営業スマイルで俺を褒めた。


すぐに返しに来る誠意を見せてくれてありがとうと礼まで言われた。


俺はまたすぐに事務所を出た。


さて、まだ朝は早い。


今日は、何で勝負をするかと考え始めた。


たしか、今日は、競輪で熱いレースがあると聞いていた気がした。


競輪場に行くまでの移動中に今日のレースのことを調べた。


俺は無為無策で金は賭けない。


そんな金を捨てる賭け方は何も面白くない。


自分で調べたうえで、勝率を上げ、しっかりと金を掛けるスタイルだ。


競馬、競輪、競艇、麻雀、カード、パチスロ、なんでもござれだ。


とはいえ、これだけギャンブルをしているにも関わらず、


俺はそこまで負けていないと信じている。


これだけギャンブルをしていれば、普通なら破滅しているはずである。


しかし、俺はまだ賭けられる。勝負ができている。


万が一の時には、競馬だ。また一発逆転の大穴を当てるのだ。


さて、競輪場に辿り着くころには、俺の賭けるレースの予想は終わっていた。


あとは、自分を信じるのみ。


昨日勝った金を元手に、増やせるところまで増やすのだ。


まずは、闇金の借金をチャラにし、次は表の方の負債を返す。


そうすれば、また、信用を取り戻せる。


今度は闇金から金を借りることなどなく、這い上がってやる。


俺はそう心の中で叫んだ。


結果、一つもレースの勝敗を当てることはできず、


俺は昨日勝った分を全て吐き出した。


放心状態である。八百長だと叫んだ。俺の金を返せと叫んだ。


財布の中は小銭だけ。俺は帰りの駅に向かう途中で泣きそうになった。


翌日、俺はまた闇金の事務所にいた。


責任者の男は営業スマイルが板についてきたのか、


初めの時よりも不自然さの無い笑顔を俺に向けた。


どうぞどうぞ。と愛想良く金を俺に渡した。


俺は礼を言って、事務所を出た。


さすがに、昨日の負けは堪えた。


全敗という結果は俺の自信を打ち砕いたのだ。


とはいえ、勝負をしなければ、この地獄を抜け出す方法は無いのだ。


俺の足は自然と競馬場へ向かった。


到着するまでにしっかりと事前調査を行う。


競馬新聞と予想サイトでどの馬に賭けるべきかを調べる。


さすがに昨日のような敗北はできない。


今日は慎重に勝ちに行く。少なくとも今日借りた分は返すのだ。


レースが始まる。俺の人生を賭けたレースでもある。


返済ができない時、どうなるかは想像もしたくない。


俺はじっと勝敗を見守った。


結果は、そこそこの勝ち。大勝とは言えないが、充分である。ホッと胸をなでおろす。


やはり、俺には競馬しかないと思う。


翌日、闇金の事務所に返済に行った。


変わらずの笑顔で責任者の男は金を受け取った。


俺はこの日も競馬場に向かった。


昨日のようにしっかりと調べ、金を賭けた。


結果は、負け。少しの札と小銭が残った。


俺は・・・


何をやってるんだ・・・


地獄の堂々巡り・・・


もう・・・いやだ・・・


そんな思いが全身を支配する。


残った少しの金も、家へ帰る途中のパチンコ屋で吐き出した。


俺は家に帰って、泣いた。


翌日、闇金でまた金を借りる。


責任者の男は変わらず金を渡す。


周りにいる手下の男は俺を侮蔑たっぷりの目で見て、鼻で俺を笑った。


すると、責任者の男は席から立ちあがり、その手下の前へ行くと、


手下の男の頭を近くにあった灰皿で殴りつけた。


男は頭と言うこともあり、かなり出血しながら、うめき声を発し、悶えた。


責任者の男はじっとその様子を見て、他の部下に病院とだけ告げた。


俺は足が震えていた。


責任者の男は俺に変わらず笑みを浮かべながら、失礼しましたと言い、


ポケットから金を出して、迷惑料ですと言って、俺に渡した。


俺は逃げるように事務所を飛び出した。


とても賭け事をやる気が起きなかった。


すぐに家に帰った。一日中、身体が震えている気がした。


翌日、俺は闇金の事務所に行き、昨日借りた分をそのまま返した。


責任者の男は笑顔で受け取った。


俺はコンビニで求人誌をいくつかもらって家に帰った。


真面目に働こうと今更ながら考えたのだ。


とにかく電話をしまくった。何でもやると伝え、何件か面接を取り付けた。


残った金で散髪をし、身なりを整えた。


二つのアルバイトを掛け持ちして、少しずつだが、返済していくことにした。


ギャンブルは全くやらなくなった。


毎月、なんとか利息分だけは払えた。


元金の方は絶望的だ。


俺は死ぬまでこうなんだ。そう考えることが増え、その度に俺は泣いた。


数年が経ち、変化があった。


返済の時に責任者の男が言った。少し、状況が変わるかもしれません。


俺は何の話か分からなかった。


その意味を理解できたのは、次の返済の時だった。


責任者の男はまた変わっていた。


以前の若い男に戻り、厳つさや威圧感も増していた。


そして、俺に告げた。


毎月、更に多く返済しろとのことだった。


無理だ。口が裂けても言えないが、それは無理であった。


現状、何とか生きている状態である。これ以上、返済額を上げられれば、


待っているのは、死だ。


若い責任者の男は下卑た笑いを浮かべながら言う。


あんた、真面目に働いているようだが、意味ねえだろ、それ。


また、競馬で大穴を取って、奇跡の大逆転劇を見せてくれよ。


軽い口ぶりで言う。


俺は、心底この男を憎んだ。そして、自分の愚かさを呪った。


俺は仕事を辞めた。早めに退職分の給料をもらい、競馬場へ来ていた。


もう、終わりにしよう。そう考えていた。


この日は超大穴だけを狙うつもりだ。もう、小賢しい知識は無駄だ。


本当に運任せ。勝てば逆転。敗ければ死。それだけだ。


実にギャンブルらしいと俺は何故か笑った。


この日の為に搔き集めた金を超大穴の一点狙いに賭けた。


馬券を握りしめ、震える身体でレース場を見る。


馬がレースの会場に入って来る。


動悸も息も荒くなる。心臓の鼓動がおかしく感じる。


もう自分が生きているのか死んでいるのかさえ分からない。


感覚が無くなっていく。もう、何も感じない。


周囲を見渡す。大勢の人が声を張り上げ、熱を込めた拳を天に突き上げている。


馬券を握りしめ、神に祈る者もいる。


はは。と笑いが出る。こいつらは俺だ。いつかの俺だ。


そして、今日の俺だ。


浅はかなる者達・・・


永遠に繰り返されるのだろう・・・


この地獄は・・・




レース開始の合図が・・・


鳴った・・・

連載するつもりですが、胸糞系なので、ご注意ください。

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