浅はかな者達part2
浅はかな者達の辿る末路
僕にとっての世界はとても窮屈で退屈なものだった。
当たり前のことを当たり前にできない者達
理解不能な行動をする者達
時間を無駄に捨てている者達
自ら首を絞めて苦しんでいる者達
全てが滑稽に見えた。
自分の方がおかしいのだろうと思ったこともあるが、
そんな考え方をしていてもしょうがないとすぐに思い直した。
小学校の頃、僕は優等生というあだ名がついた。
そのあだ名をつけた者達は何がおかしいのか、ゲラゲラと笑っていた。
あだ名をつけておいて、彼らはそのあだ名で僕を呼ばなかった。
また、よく分からないが、僕の事を怖いとか、
何を考えているか分からないと言って、僕の周りには人がいなかった。
孤独と感じたことはなかった。いじめられている訳でもなく、
ただ、僕の存在は空気に近かった。
周りはゲームやテレビの話、その時の流行りをひたすら話していた。
僕は何も思わなかった。
中学になると、物が無くなるようになったり、
明らかに不愉快な思いをすることが多くなった。
相変わらずテレビやゲーム、流行り、SNSで周りは盛り上がっていた。
僕は完全に空気と化した。
とはいえ、僕は何とも思わなかった。
中学2年の中期頃にもなると、周りも今後の進路を考えるようになる。
みな、テスト勉強を頑張るようになった。
空気の扱いをされていた僕にも、勉強のことで聞いてくる者がいた。
僕は淡々と勉強方法等を伝えた。
僕の教え方が良かったと評判になると、僕への周囲の流れが変わった。
中学3年にもなると、僕の周りには常に人がおり、
勉強のことや雑談、今後の進路のことなど、初めて有意義な話ができた。
僕の方も刺激があり、思わぬ進路を行く者には、積極的に話しを聞いた。
僕の親は干渉が少なく、進路も行けるところに行けば良いという感じだった。
ただし、大学に行くなら自分のお金で行くように言われた。
高校受験は難なく第一志望に受かった。
家から近く、周りにも受かった者が多くいた。
高校に入っても特に変わることが無い日常が続いた。
とはいえ、周りにも年相応に落ち着いて話せる者も増え、
僕は親友と呼べる人間を何人か作ることができた。
一度、同級生の女子から告白をされた。
僕は傷つけないように気をつけながら、その告白を断った。
相手は僕の返事を聞いて泣いていた。
僕は何とも思わなかった。
親と学校からの承諾をもらって、僕はアルバイトを始めた。
大学に入る為の資金を用意する為だ。
大学というものに特に思い入れは無かったが、
高校を卒業してすぐに働くというのも、ピンとこなかった。
家から少し離れたファミリーレストランで働くことになった。
ここなら顔見知りも来ないだろうと思った。
充実していると言っても良い日常を繰り返し、
大学受験のシーズンとなった。
学費を自分で貯めたというアピールポイントや、
内申点、成績共に充分な実績を評価され、
そこそこ名の知られた大学に受かった。
親も親友も喜んでいた。
僕は何とも思わなかった。
当たり前のことを当たり前にやっただけだ。
周りを見ると、志望校に受からなかった者や浪人する者、
大学は諦め、就職する者など、様々な分岐点が見られた。
みな、感情が忙しく変化していたように思う。
高校から大学へ行ってもアルバイトは続けた。
将来の為にもお金は必要だと思ったし、慣れた仕事をするのは楽だった。
ただ、大学生活を送る中で、僕はまた空気化していた。
見ず知らずの人に積極的に話し掛けることなどできないので、
僕はずっと一人で過ごした。
大学の授業は楽しかった。様々なジャンルの講義を選んだ。
たまに高校の時の親友たちと遊んだ。
大学のゼミに入り、また進路を考えるようになると、
ふと、ずっとこんなことの繰り返しなんだなと思うことがあった。
その思いを抱いてからは、僕の世界は少し灰色になった。
自分の今後の進む先が見えた気がして、
人生のゴールを見てしまった気がした。
急激に世界が窮屈で退屈に思えた。
大学を卒業したら、どこかの企業に就職して、
一生働く人生だ。
そう考えると、僕は足元が崩れていくような気分になった。
意味は、あるのか?
何か、意味がある人生になるのだろうか?
しばらくの間、僕は思考に耽ることになった。
意味のある人生。それって、なんだ?
何をすれば意味があるのだろうか?
そもそも、僕に意味のある人生など送る能力があるのか?
堂々巡りのような思考は大分長く続いた。
周りが就職活動を始め、進路をどうするか決める段階になった。
僕は親や、高校の親友達に悩んでいることを打ち明けた。
親は良い大学に入ったんだから、就職は必ずしろと言った。
親友達は僕の優秀さと能力があれば、どこでも何かを成し遂げられると言った。
はっきり言って、何の役にも立たないアドバイスだと思った。
聞いた自分を恥じた。
結果として、僕は大学を卒業したが、就職はせず、海外へ行くことにした。
そのことを話すと、両親は僕に家から出て行けと言った。
父は顔を真っ赤にして怒鳴り、母は心底落胆したように泣いていた。
今、思えば、僕は進路や人生と言う先に続くレールではなく、
終点とも言える、死に場所を探していたのかもしれない。
今、現在の僕は世界が恐れているテロリストの一員になっていた。
どうしてそうなったかと聞かれても、納得性のある答えは出ない。
ただ、導かれるように、僕はそのテロリストの指導者に会い、
一員となった。
ただし、指導者の教えや考えに惹かれた訳では無い。
どんな形であれ、何かを変えるという行動力に惹かれたのだと思う。
一員となってからしばらくして、大きな作戦を決行する旨が説明された。
指導者に聖戦と言われ、狂喜乱舞しながら涙を流している者達を見て、
僕は何も思わなかった。
この作戦が始まれば、一体どれだけの被害が出るのかは想像もできない。
世界が変わることになるだろう。
そう思うと少しワクワクした。
ある日、夜の見回りをしていると、指導者の部屋のドアが少し空いていた。
指導者が誰かと話している。電話か?
僕は何故か立ち聞きをしていた。
話の内容からすると、指導者も誰かの指示を受けているようで、
信者ともいえるテロリストの一員達を、
今回の作戦で使い捨てるようなことを言っている。
世界を変える為の尊い犠牲だと。
また、報酬についても話している。
どうやら、莫大な金額を要求しているようだった。
僕は虚無感に襲われた。
結局、こんなもんか。そんな考えが浮かんだ。
作戦の決行準備が始まり、僕の目の前には大量の武器弾薬が並んだ。
たくさんの信者が集結し、指導者を称えている。
僕の心の中は一つの言葉で満たされていた。
なんて浅はかな者達だろう・・・
僕も含めて・・・
『僕にとっての世界はとても窮屈で退屈なものだった。』
当たり前のことを当たり前にできない者達
理解不能な行動をする者達
時間を無駄に捨てている者達
自ら首を絞めて苦しんでいる者達
全てが滑稽に見えた。
僕は大量の武器弾薬のある場所に向かった。
護衛をしている者達に、お前達も指導者の言葉を聞いて来いと伝える。
こうして、僕の周りには最低限の人数しかおらず、
僕はミサイルや爆弾のある位置に行き、
それらに銃を向ける。
ひとつでも爆発すれば誘爆により、ここら一帯は吹き飛ぶだろう。
生き残る者はいない。
護衛が気付いて騒ぎ始めた。
僕に銃を向けて来る。
僕は・・・
意味を見つけたられたようだ・・・
僕は心の底から笑って・・・
引き金を引いた
連載するつもりですが、胸糞系なので、ご注意ください。
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