噂は廻る
初投稿がゆえに不備があるかもしれませんがお許しください。
俺はケンタ。小学5年生だ。特別陽キャでもない、かといって友達がいなかったり嫌われているわけでもない普通の小学生。いわゆる1,5軍ってかんじなのかな?特に不満なく生活できているが大変だと思うことは一つある。それは「噂」だ。これがまた僕を含めた小学生は大好物だ。
「A子はB太が好き」 「C先生がD先生とデートしていた」 「あの転校生刑務所入ってたらしいぜ」
種類も様々、信憑性もいい加減なものから本気のやつまで幅広く流れる。しかしこれは携帯電話もPCもない小学生には重要な情報網である。そしてこの激しい情報の流れに乗っていくのが大変なのだ。俺みたいな1.5軍みたいなやつは特に少しでも情報を逃してみんなの話の話題に置いて行かれることを恐れている。常に耳を立てて過ごす学校生活だ。ただ受け取った噂は広めることができる。会話のネタが手に入るというのはこの噂採集のメリットだと思っている。
「○○がやらかしたらしいぜ~ww」「え~まじぃ笑笑」
「なになに!どうしたの」
噂を嗅ぎつけた俺は会話に入る。話しているのはイケメンで有名な杉内と、陽キャ女子の斎藤
「なんか3組の山田がクラスの花瓶を割っちまったんだとよ」
「それ本当!?」
「しらねー、友達から聞いたからよ。」
「そっか、教えてくれてサンキュー」
「そんなことよりぃ、杉内くーん、今度デズニーランド行かなーい?笑笑」
よし、3組行ってみるか。イチャイチャしている2人を背に確認しに行ってみる。
「え、違うの?」
3組で仲のいい新垣に花瓶の件を聞いてみたがどうやら根も葉もない嘘のようだ。
こうなると途端に冷める。これだからイケメンは...
途方に暮れた俺はこの昼休みをとりあえず友達と話でもして暇をつぶそうかと自分の教室に戻る。
「おーいハヤTしゃべろうぜ」「お、ケンTじゃん、いいよー」
こいつは寺原ハヤト、小学1年生のころからずっとクラスが一緒で仲がいい。あだ名で呼び合う仲だ。
「それで、いい噂は見つかったのか?」
俺は首を横に振るしかない。
「駄目だった、惜しかったなぁ」
「惜しいってなんだよ(笑)じゃあお前は何かいい情報持ってないの?」
「情報?だから噂は特になかっ」
言いかけたその時ハヤトは食い気味に
「いやだからお前が元のやつを聞いてんの」
「俺が元?」
「そう、噂の元だよ。どんな噂も元を辿ることができるはずだろ。0から噂は生まれないからな、0を1にしたやつがいるはずだぜ」
「なるほど、確かに俺広めたことはあっても最初になったことはないなぁ」
「まじか、なんか意外だわ」
「おい!意外ってなんだよ」
そんな感じのくだらないやり取りで笑ってたら昼休みもあっという間に終わってしまった。
「じゃあねー」 「またねー」
授業も終わってようやく下校。今日あいつが言っていたことが気にかかる。『噂の元』か。確かに自分から流すのって結構楽しいんじゃないか。よし、いっちょ探してみますか。
次の日、その次の日、一向に面白いものは見つからない。スキャンダルのようなものは意外とないもんなんだなということを実感する。結局また下校時間になってしまった。こうなれば最終手段に移るか...そう『嘘』をつくのだ。自分は真っ当な人間なのでこれは避けてきたが今は噂を作りたいという欲がポップコーンのように弾けそうになっている。どうするか、記念すべき一発目誰も思いつかないようなものをいきたい。そうだ!!!いいのを思いついた。とはいえ周りにはもう誰もいなくなってしまった。誰かいないかな。その時一人見覚えのあるやつがいた。斎藤じゃないか、あいつも家こっちの方だったんだな
「おーい、斎藤」返事はない。
「実はさ、流してほしい噂があんだけどさ、ケンタが暗殺者に狙われてるっていうのを流してほしいんだよね、お願い!」
自分をまきこんだ噂、これこそ一発目に相応しいんじゃないか(本当は他人を使った嘘をつくのに抵抗があっただけだが)。嘘といってもこんな丸わかりのやつなら冗談半分にみんな笑ってくれるだろう。
自信満々に言ったつもりだが特に反応もなく斎藤はこくりとうなずいただけでそのまま走って行ってしまった。
あいつにしては珍しく静かだな、たぶんイケメンにしか興味ないんだろうな。まぁ噂を広めてくれればいいさ。
次の日登校するも誰もその噂に触れてこない。別に避けられている様子でもないし会話内容も普通。恐ろしいくらい普段と変わらない。
「なあ斎藤、昨日帰り道で言った俺の噂流してくれたか?」
「はぁ?昨日はずっと杉内君と帰っててあんたとは会ってないわよ。」
え...?確かに俺は斎藤と話したはずだが...
「あ、そうだ帰り道の噂で思い出したけど、あんたの帰り道の方に幽霊が出るって噂よ。しかもその幽霊に話したことは24時間後に本当になるらしいわよ。怖いけどそれが本当ならぜひ会ってみたいわねー、一生遊べるお金が手に入る、なんて言えばいいんだもの。」
これ以降の会話は記憶していない。そして6時間目終了のチャイムが鳴った。
「ケンタ、一緒に帰ろうぜ」