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マホウヲハコブモノ  作者: まきなる
第一章
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幕間2 羽山さんまた寝るんですか

 琴吹郵便局の窓口案内と言えば羽山栞だ。凪よりも少しばかり年上の印象を受ける金髪の女性で、この郵便局の言わば管理者のような立ち位置。とは言っても特別何か権利があるわけではなく、郵便局に一番長く勤めているために何となく仕切っている形だ。


 羽山は頬を机につけて時計を見つめていた。少し前までは自身も配達に行っていたが、雨木が入ってから凪との二人で回しているため、羽山は受付だけでいい。ではヴィドの工房の手伝いをしようとしても、つい先日、工房をうっかり爆破させてしまったために彼から立ち入り禁止令がでている。


 暇だった。以前は受付の仕事と配達の両方をやっていたために仕事量が多く、実際に他の人員が欲しいと思っていた。だが、雨木が入った結果、郵便局内の仕事が思ったよりもスムーズに回ってしまい、羽山の仕事が荷物の確認と収支の確認ぐらいだった。税金という概念が琴吹郵便局には適応されないので、羽山にとっては楽だが退屈な仕事だった。


 雨木が来てからもうすぐ一週間で、かなりアクシデントがあったが羽山は別に気にも留めていなかった。自身も昔に似たような経験をしていたために、逆に懐かしい気持ちが溢れていたぐらいだ。雨木がリックに襲われた際、見るに耐えないほど悩んでいたヴィドの隣であくびをしていたぐらいで、ソフィアに釘を刺されたほど。長年の多忙に解放されたという事実は、羽山の心によき休息をもたらしていた。まぁ反動で、カウンターでしょっちゅう寝ているのだが。


 彼女は実は琴吹郵便局に併設されたシェアハウスには住んでいない。仕事場と住居が一緒なのは耐えられず、同じ森の中に別に住居を建てている。彼女はそこで朝日と共に起き、テキトーに朝ごはんを食べ、杖の手入れをし、時間になったら郵便局に出社する。しばらくするとヴィドが、その後に雨木か凪が出社する。影達がポストで荷物を回収している場合は、カウンターの引き出しにハコを入れてあるので数と送り先の確認。それを雨木と凪に渡して彼らが帰ってきたら帳簿を合わせて終わり。


 暇な時間は精霊と戯れたり、ソフィアの無駄話を聞いてのんびり過ごしている。彼女にとって数百年生きてきて、初めての休息期間と言っても過言ではない。いい加減魔術をかけっぱなしにしているのも疲れてきている。底なしの魔力を持っていても小さく複雑な魔術を使用し続けるのでは頭が休まらない。


 もう魔女狩りという文化はとっくに無くなっているし、羽山の種族の実験は完全に禁止されているし、お客さんが来ていない郵便局内なら別にいいか。それに客もノックしてから羽山が開けないと入れないし。羽山は空中から腰から杖を取り出し、一回転する。煌びやかなエフェクトが現れたと思えば、彼女自身にかけていた変装の魔術が解けた。丸みがあった耳は特徴的な尖った耳に変化する。数百年ぶりに本来の耳を触ると少しくすぐったい。


 元のエルフの姿となった羽山はグーっと伸びをする。そして大きなあくびをしてーー


 あ、寝た。 


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