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プロローグ2

「なんでなんだ……」


 手元にある自分が確かに書いたラノベを手に取り、表紙を少しの間見つめてからパラパラとページをめくる。

 表紙の絵は作品の雰囲気を確実に伝える素晴らしい出来、挿絵も確認はしたのだ問題なかった。

 ならば内容が駄目だった……? いや、そんなはずはない。なんといっても新人賞金賞というプロのラノベ作家に評価され、プロの担当編集と協力することで更に完成度を高めたからだ。


 そもそもラノベを始め、小説を買うに至るまでにはいくつかのポイントがある。

 表紙買い、あらすじ買い、作者買い等々がそうだ。その中でも実際に書店に行き最初に目につくのが表紙であり、その表紙が問題ないとなれば問題は自分にあるということ。俺の視界はどんどん暗くなっていった。


「ただいま~、どうしたのよ電気もつけないで」


 同棲している彼女の声にやっと意識が現実に戻る。


「あぁ……ごめん。ちょっと落ち込んでた」

「……そう。とりあえず椅子に座ったら? 私は飲み物持ってくるから」


 暗い雰囲気を感じ取ったのだろう。いつでも悩みがあったら聞いてくれ寄りそってくれる、彼女に救われた回数は数えきれない。


 そこで初週の売り上げが芳しくなかったことを伝えると、そういう時もある、面白いものを書き続けていれば絶対に報われると励まされた。

 そうだ、ここまでが順調すぎたのだ。気づかされた俺は商業的なことは意識しないようにし、小説の

続きにとりかかる。


 金賞を受賞したことでシリーズとして続巻が刊行されることは決まっている。こんな少し売れなかったくらいで折れている場合ではない。


 俺はそこから出来るだけ結果を聞かないようにした。売り上げは二の次、ただ内容を面白くするのに没頭するため。

 だけど結果はやればやるだけついてくる。そんな単純なものではなかった――。


「お疲れ様でした……。申し訳ありません、私の力不足です……こんなはずではっ、こんな終わり方をしていい作品では絶対にないんですっ」

「ありがとうございます、そう言っていただけて嬉しいです。クローライフも少しは救われたと思います」


 俺以上に悔しそうにする永瀬さんを見て、逆に俺は冷静に現実を受け止められた。

 永瀬さんと共に作り上げた俺のデビュー作『クローライフの冒険』は、結局六巻で打ち切りに。

 まだまだ続く壮大な物語だったのだが一巻から売り上げが伸びることはなく、ダラダラと続けるような形で終わりを迎えた。

 俺は最後まで手を抜いたりはしていない。あくまで、そこまで売れていない作品を諦めきれず書き続けたというだけだ。


「ごめんな……」


 本棚に並ぶクローライフの冒険の背表紙を眺めながら、涙目で謝罪の言葉をつぶやく。

 とにかく面白い、誰もが主人公であるクローライフと一緒に旅をしているような感覚になるよう書いたつもりだったが、数あるライトノベルの一つとして終わってしまい、悔しさで唇をかみしめる。


 三巻あたりからはクローライフが自分の子どものように思うまでになった。自分の子どもを皆に凄いんだぞと認めてもらい褒めてもらう。その一心で取り組んだが旅の半ばでそれが頓挫(とんざ)してしまい、喪失感で一杯に。

 せめてもの抵抗で、無理矢理六巻で物語を完結させることはしなかった。クローライフは苦労が多く、これからもっと報われるはずだったのだ。それをすっ飛ばすなんて出来るはずが無かった。



 そんなデビュー作の終わりを迎えた日、俺はある決断をした。

 すぐにまた次作を……クローライフ(わが子)を捨て違う物語を描く。そんな非情な行為を出来ないと思った俺は、ライトノベルから距離を置くことに。

 

 そして同日、同じくラノベが好きな彼女にも別れを告げた。一緒にいても迷惑しかかけないと申し訳ないという気持ちにしかならなそうだったから……。引き留めようとなおも優しい言葉を投げかけてくれる彼女を無視し、逃げ出してしまった。

 ここまで支えてくれ楽しい時間をくれた彼女に対し、理不尽で最低な一方的押しつけ。そんなことは百も承知だが、彼女に合わせる顔がなかったのだ。

 彼女は何も悪くないのに――。

 ラノベ作家になって出会ったすべての関係者に対して心の中で謝罪。俺はこの日、夢であったラノベ作家という職と、大事で大好きで何よりも大切な彼女を失った――。


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