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第8話:ゴーストリアの三因子02


 久方ぶりに学院に復帰した零那であったが、勉強の方は特に障りも見られなかった。色々と完璧超人であるがため、高等教育程度は既に修めている。零那を快く思わない人種には皮肉だろうが、当人は斟酌もしない。


 顔良し。頭良し。運動良し。


 そのせいで悪手としてのしがらみに捕らわれたが、おかげで一子とも出会えた。それもまた事実だ。


 そして一子を通して二葉と三代と四季にも出会えた。友情に於ける質と量は議論あれど、零那は前者に依存する。であればそれもまた心地よくはあった。南無。


「何だかな」


 昼休み。二葉が困惑したように聞いてくる。


「一子の墓参りはした?」


「無論」


「あっし的には……残念だけど……」


「俺的にもだな」


「だぁねぇ」


 気遣うような黒の瞳。


「ありえないっしょ。零那置いて先に逝くとか」


「私のせいじゃないし!」


 そんな一子の言葉は二葉には届かない。


「それについてなんだが……」


「何よ?」


「幽霊って有り得ると思うか?」


「はあ?」


 侮蔑にも似た心配の目で二葉が尋ねる。


「…………」


「ええと」


 三代と四季もあまり理解はしないらしい。


 四人揃って昼食の最中。一人幽霊の一子だけが平然と空席に座っている。


「何の冗談?」


「それはそう言うよな」


 胡乱げな二葉の態度は消化事項だ。


「何かしらの幽霊が見えるのですか?」


 四季がわざとらしく問う。


「そこに」


 と空席を指す零那。


「ワンコが見える」


 清々しい言葉だった。


「えーと」


「…………」


「その……」


 四天王の対応は相応だ。仮に立場が逆なら零那も思案する。


「一子の幽霊って?」


「だな」


「見えるのですね……」


「だな」


「…………」


 三代は蕎麦を手繰るのみだ。白い瞳は何も映していない。


「はぁい」


 ヒラヒラと一子が手を振るが、二葉たちは反応しなかった。


「冗談きついっしょ」


 二葉が冷や汗をかく。


「だよなぁ」


 真剣に神経の心配をする零那である。幻覚で済むなら話は早いが、意識そのものは明瞭だ。何を憚ることもない。


『幽霊が見えるの?』


 ラインで三代が尋ねてきた。


「まぁ」


 言葉で返事。


『ふぅん?』


 何か曰くありげな三代の書き込みだった。


「幽霊に理解があるのか?」


『それなりに』


 またしても。


「そなの?」


「そうなんですか?」


 二葉と四季が目を丸くする。それはオカルトの領域であるから信じる者が救われないのも必然ではあった。


『けど……大丈夫じゃないですよね?』


「何がよ?」


『お悔やみ申し上げます』


「そうなるよな」


 妄言の一種。その方が理屈としては通る。


「やっぱさ……」


 二葉が透けるような悲哀を瞳に映して言う。


「悲しかったり? 慰めが必要?」


「慰めてくれるのか?」


 零那は苦笑いを選択した。


「その……エッチな意味じゃないし」


「そりゃ残念」


「エッチで慰めてほしかったり?」


「性病が怖いから遠慮する」


「ビッチじゃないし!」


「ビッチなくらいが丁度良いだろ」


「むぅ……」


 金髪を弄りながら劣勢を認識する二葉だった。


「では私が」


「委員長まで馬鹿なこと言うなよ……」


 昼食をとりながら偏頭痛に悩まされる。


「少なくとも零那さんが一子さんを失ったのは本当です」


「だな」


「ご愁傷様というだけなら他人でも出来るでしょう」


「かね」


「私たちは共同体です。喜びも悲しみも分かち合ってこその友達ではないでしょうか?」


「委員長の人の良さは筋金入りだな」


 照れもせずに真っ当な友情論を語れるのは四季くらいだろう。


 希有な精神の持ち主ではある。


 ブラックパールにも似た真摯な瞳は、同情というには苛烈な熱を湛えている。


「さてどうしたものか?」


「私が恋人になります」


 サックリと四季は言ってのけた。


「ワン。駄目!」


 そんな一子の抗議は総スルー。


「あっしでもいいよ?」


 二葉まで乗っかってきた。


「三代もか?」


『一子云々は関係なく……小生にとっても零那は良い買い物だと思いますけどね』


「罪な男だな」


 四天王相手に軽やかなプライベートエリアを構築するのは、零那の特技ではあったが。


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