婚約破棄…本当に?
「イザベラ、君との婚約を破棄させてもらう」
婚約破棄…
私は突然のことに、驚き、口に手を当てる。
「何故…?」
心からの疑問だった。
今まで、そんな素振り、一度も見せなかったのに。
殿下は笑うと、ひとりの御令嬢を呼び寄せる。
「私は真実の愛を見つけてしまったんだ」
彼女は、柔らかく微笑むと、カーテシーを披露した。
「エラ・ジョーンズでございます。お初にお目にかかりますね」
ピンク色のドレスを身に纏った彼女は、私とは正反対のようだった。
私は唇を噛む。
「本当に、破棄、なさるのですね…?」
「嗚呼」
私は、エラの方に歩き出す。
唇は噛んだまま。
そしてゆっくりと、手を振り上げる。
皆が固唾を呑んで見守る中…
私はまず拳を掲げた。
勝利のポーズである。
まるでボクシングのチャンピオンのように。
そして、エラの手を握る。
「貴方は、…天使様ですか?」
「へ?」
「こんなポンコツ王子引き受けてくださるなんて…天使様に違いないわ!」
「は?」
エラと馬鹿王子は開いた口が塞がらないようだった。
「いやぁ、この一年のうちに、この馬鹿王子が何かやらかしたら、私、婚約破棄を陛下にお許しいただけると、お約束いただきましたの。でも、なかなか最近はお静かでしたので、心配していましたが、やはりポンコツ!やりますわね!」
私は興奮して、ポンコツを見る。
ポンコツは、やはりポンコツ。
話が理解できないようだ。
頭にクエスチョンマークが浮かんでいる。
「あら、ポンコツには難しいですわね…」
私は、先ほどまで唇を噛んで隠していた笑みを、もう隠す必要さえ無いので、にこにこと笑う。
「お前は、俺を好きだったんじゃないの…か?」
「笑止!」
「でも、毎日のように俺に会いに宮殿まで来て…」
「国王陛下に、馬鹿を叩き直してくれ、と言われていただけですわ」
「じゃあ、あれはツンデレではなく…?」
「デレの要素皆無でしたけど?ただの説教です」
やはりポンコツはポンコツか。
「子守は疲れましたけれど、もう、お役御免ですわね。天使様、頑張ってください!」
エラは、顔が引き攣っている。
可愛らしいお顔が台無しだ。
「あ、そう言えば、私との結婚が無くなってしまった時は、ポンコツは王家から除名されますので、そのおつもりで」
その時、天使様のお顔が真っ青になる。
「あら?真実の愛じゃあございませんの?」
私はくすくすと笑う。
「では、失礼いたしますわ」
私は、天使様のような、なっていないカーテシーではなく、本物のカーテシーをして、その場を後にした。
不定期に起こる、“婚約破棄ものを書きたい欲”によって生まれました。
作者が楽しんで書いたものを、読者の皆様と一緒に楽しめれば、と思い書きました。
お楽しみいただけたでしょうか?
お読みいただき有難うございました!
09/28追記
誤字報告有難うございます!
適用させて頂きました。
また沢山のブクマ、評価を有難うございます!