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今更好きだと言えない  作者: 秘翠 ミツキ


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「シェルト様⁈」


意識が遠のいていくシェルトを、アイリーンは支えた。自分より身体の大きいシェルトを支えるのは正直キツイ。だがアイリーンは、必死にシェルトを支え、無理やりベッドまで引きずって行った。


汗が凄い。シェルトの話では病は治ると言っていたが、実際はまだ治った訳ではない。アイリーンは、人を呼びクラウスへ知らせをやった。


一刻程でクラウスと何故か、リオネルも一緒に戻ってきた。クラウスを待つ間、アイリーンはシェルトの額の汗を拭い、側についてずっと手を握っていた。


「お兄様!シェルト様がっ」


「大丈夫だよ、アイリーン。落ち着くんだ。今診る」


クラウスの言葉にアイリーンは、後ろに下がった。その際に丁度リオネルと目が合ってしまった。なんだか気まずい。アイリーンは、嫌な汗が身体を伝うのを感じながらも、軽く頭を下げた。


「特に問題はないですね。少し無理をなさって疲れてしまったのでしょう」


アイリーンも、リオネルもほっと胸を撫で下ろした。


「が、リオネル様。余りこのような()()()()事をされますと、困ります」


そう言いリオネルを見るクラウスの視線は鋭かった。


クラウスの話によれば、シェルトの体調が優れないと知らせがあり登城するも、シェルトの姿はなかった。代わりにリオネルに捕まり、延々と長話に付き合わされていたそうだ。


「シェルト様をアイリーンに会わせる為に、僕が邪魔だからと虚偽の知らせをよこして更に無駄話に付き合わさせるなど、やることが実に幼稚です。相変わらず、変わりませんね、リオネル様」


シェルトは、治るまでは絶対安静にする様に言われていたのにも関わらず、クラウスの許可なく勝手に城を抜け出し、自ら馬に乗り駆けてきたらしい。



「全く、子供じゃあるまし。莫迦としか言い様がない」


お兄様、それは流石にまずいのでは。相手は王太子と第3王子ですよ⁈そんな、莫迦なんて……。まあ、否定はできないとアイリーンも思うが。



アイリーンは横目でリオネルを見遣る。酷い言われ様にも関わらず、気にする素振りはない。寧ろ逆に褒められたと言わんばかりの表情を浮かべていた。この2人の関係性がいまいち、分からない……。



それにしても……そんな無理をしてまで、私に逢いに来て下さるなんて。


「シェルト様……」


アイリーンは、瞳を潤ませて呟いた。そんな姿にクラウスは、面白く無さそうな表情で口を開こうとしたが。


「……んっ」


「シェルト様‼︎」


次の瞬間ドンっと、クラウスはアイリーンによって突き飛ばされた。目を覚ましたシェルトにアイリーンは、猪突猛進の如く駆け寄る。



「あ、アイリーン……」


クラウスは、よろけてアイリーンを見遣るがアイリーンはシェルトに夢中で気にも留めていない様子だ。


「まあ、兄妹なんてそんなものだろう。お前も、いい加減妹ばなれしろ。オニイサマ?」


リオネルに、肩を叩かれたクラウスは放心状態でアイリーンとシェルトを見るしか出来ない。




「シェルト様っ」



「アイリーン……っすまない、僕は、君に」



「謝らないで下さい。私、私……」



アイリーンは、シェルトの手を握り、震えながら涙を流した。



「君を、悲しませたい訳じゃない、んだ……これじゃあ、フラれて当たり前だね……ははっ」



力なく笑うシェルトに、アイリーンは不思議そうな表情を浮かべた。


フラれるって、どういう事?


「フラれてとは……一体誰が、誰に……」



「は、いや。それは、僕が……君に」


瞬間妙な空気になる。


何だろう。シェルト様の話がいまいち見えないし、噛み合わない。私がシェルト様を、一体いつフッたと言うのだろうか。まるで覚えがない。


「君が、今更好きだと言えないと……言ったから」


「へ……」


「だから、僕はてっきり」


「ち、違います!私は、今更好きなんて言えません。だって、私は……シェルト様を、貴方を、愛してるんです‼︎……と言いたくて、その」


緊張し過ぎて、言葉選びを間違えたかしら……。でも、それだけシェルト様の事を想ってると伝えたかったんです……。


アイリーンは、未だ涙はそのままに、恥ずかしそうに頬を染めはにかんだ。その姿に、シェルトもまた屈託の無い笑みを浮かべてアイリーンを見ていた。



アイリーンが堂々と愛の告白をしたその瞬間、後ろに立っていたクラウスの手から注射器が音を立てて落ちた。クラウスは、信じられないものを見るような目で、アイリーンとシェルトを見ながら、怒りと悲しみに震えていた……。


だが、アイリーンが暫くしてその様子に気がつき「お兄様、寒いんですか?風邪を引かれたんですか?」と心配そうに言われた事で毒気を抜かれたのは、後半刻程先である。


「アイリーン……」


「シェルト、様」


それまで甘々な空気を醸し出す2人の背後で、この世の終わりというような顔をして立つクラウスと、その横でそれを見て愉快そうに笑うリオネル。暫しこの状態は続いた。



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