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今更好きだと言えない  作者: 秘翠 ミツキ


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「きゃーーっ‼︎」


レベッカは、頬を叩いたと同時に突如叫んだ。その声は余りに大きく、屋敷中に聞こえるのではないかと思うほどだった。


その光景に呆然とするアイリーンは、立ち尽くした。毎回、アイリーンの予想斜め上をいく行動をする……。そんな時、扉が開きユリウスが入って来た。


「どうしたんだ⁈」


中に入ってきたユリウスと、目が合ってしまった。かなり驚いた顔をしている。当たり前だ。あんな悲鳴を聞いたら誰でも驚愕するだろう。


ユリウスは、次にレベッカを見た。そして、まあ言わずとも分かるが。


「レベッカ⁈どうしたんだ⁈その頬は⁈」


これでもかと言うほど、大袈裟に驚くユリウスをアイリーンは鼻で笑い、ご自分で叩かれてましたよと言った。無論、心の中でだが。


「ゆ、ユリウス~」


レベッカは、涙を流しユリウスに擦り寄る。素晴らしい、名演技ですね。何処か、芝居小屋でも紹介致しましょうか?と言ってやりたい。


レベッカは、涙を流しながら泣くばかりで何も言わない。その様子に、更に嫌な予感がして、それは的中する。



そうこうしている内に、アイリーンの両親やらユリウスの両親、更には今日の招待客達まで集まってきた。


成る程……レベッカは、これを待っていたのか。全て計算されていて、ゾッとする。



「アイリーン様が私の頬を叩いたんです」



レベッカは、人が集まった事を横目で確認すると、そう口を開いた。


これから、行われる茶番劇を想像したアイリーンは、ため息をつく。もう目に見えている。ユリウスに責められ、両親に責められ、ユリウスの両親からも白い目で見られ、招待客らも同様だろう。


誰一人として、アイリーンの味方などいない。



「アイリーン様が」


「アイリーン、どういう事なんだ!」


「レベッカ、かわいそうに」


「アイリーン!」


「こんなに、頬を腫らして」


「聞いているのか⁈」



何だか、どうでもよくなってきた。この人達は、結局人を見た目で判断している。目に見えるモノだけを真実だと決めつけ、確認すらしようとしない。


どうして、私がこんなに責められなくてはいけないの?


脱力感と諦めと、怒りと悲しみがいっぺんに押し寄せ、今直ぐこの場から消えてなくなりたい。


誰も助けてくれない。誰も……。



「大丈夫だよ、アイリーン」



不意に掛けられた言葉に、アイリーンは弾かれた様に顔を上げた。



「シェルト、さま….…」


これは、夢なのだろうか。シェルトがいる。


シェルトは、アイリーンを庇う様にしてユリウスやレベッカと対峙した。あの時と、同じだ……。



「レベッカ、随分頬が腫れてるね」


「……アイリーン様に、叩かれたのよ」


「成る程。それにしても、手形がくっきり残ってるね。でも、変だな。右頬なのに、右手で叩かれてるなんて」


その言葉にレベッカは、ハッとして頬を押さえた。周りも、一斉にレベッカを見遣る。



「レベッカ、頬を見せてくれないか」


ユリウスは、嫌がるレベッカの手を退け、頬を確認した。確かに、レベッカの右頬には右手の痕がくっきり赤く付いている。


「レベッカ、これはどういう事なんだ⁈」



「えっと……その。これは、その……あ、あアイリーン様に脅されたのよ‼︎」


この期に及んでまだ嘘を並べるレベッカ。


「自分で頬を叩く様にって!そうしないと、後で酷い目に合わせるわよ!って言われて……私怖くて」



「アイリーン、本当なのか」


ユリウスは、アイリーンに確認をしてくる。私ってそんなに信用ないんだ……ここまで来ると声を出して笑いたくなる。今のこの状況下で明らかにレベッカの自作自演を物語っているにも関わらず、それでもなおアイリーンへ確認を取るという。


こんな、陳腐なレベッカの主張を、ユリウスは信じると言うのだろか。



「ユリウス、君って気持ち悪いね」


不意に、シェルトが口を開いた。


えっ……。聞き間違えだろうか。シェルトの意外過ぎる言葉にアイリーンは驚き固まった。

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