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「どういう事なんだ」


少し怒号混じりの声をアイリーンに向けるユリウスに、アイリーンは呆然としていた。いえ、それはこちらがお聞きしたいくらいです…。余りの出来事にアイリーンは言葉も出ない。がそれを肯定したとユリウスは思ったのか、アイリーンを睨みしゃがみ込むレベッカを抱き起こした。


「見損なった、まさか貴方がそんな人だったとは」


「…私は、何も」


「レベッカは今日、私の幼馴染として貴方に挨拶をしたいと言って屋敷を訪ねたんだ。私も同伴するつもりだったが間に合わなかった故に先に行って貰った。レベッカは私の幼馴染として貴方と仲良くしたいと言っていたのに…こんな風な振る舞いをするなど」


アイリーンは今までユリウスの発言で苛つく事など無かったが、今初めて彼に対して苛つきを覚えた。


確かに状況からしてアイリーンがレベッカにお茶を掛けた様に見えてしまうが、アイリーンの言い分など全く聞かずに話を勝手に進めていく。


ユリウスがまさかこんなに勝手な人だとは思わなかった…。


しかも、その後も「幼馴染としてレベッカは」幼馴染、幼馴染、幼馴染…ユリウスは連呼する。正直鬱陶しい。幼馴染だからなんなんですか⁈幼馴染ってそんな特別な存在なんですか⁈と言ってやりたかったが言えない…。



「分ったなら先ずはレベッカに謝罪の1つも言うのが礼儀だろう」


「……申し訳、ありませんでした」


アイリーンはムッとしたが、耐えた。此処で言い返した所で勝ち目はない。何しろユリウスは完全にレベッカの味方だ。致し方なしにアイリーンは謝罪をする。


「レベッカ、彼女もこう言っている故許してやって欲しい」


「まあそうね〜そこまで言うなら…しょうがないから、ユリウスに免じて許してあ・げ・る」









アイリーンは本を握り締める。あれは今から、三か月程前の事だ。今思い出しても腹が立って仕方がない。


レベッカとはもう2度と関わりたくないと思ったが、その後何故かユリウスはレベッカを伴ってアイリーンの元を訪れる。これは何?嫌がらせか何かか…と思う。


ユリウスとレベッカの訪問がある度にアイリーンは悪者にされる。レベッカは兎に角上手い。その道の専門家(プロ)なのかと思う程に。ズル賢いとでも言えばいいのか。いつの間にかアイリーンを悪者に仕立て上げユリウスはそれを鵜呑みにする。


だがそれにしてもだ。ユリウスは全て幼馴染であるレベッカの話を信じ、一応婚約者であるアイリーンの話を全く聞かないとは人間性を疑わざるを得ない。


ユリウスとは家同士の政略結婚故好きとか嫌いとか、そんな感情は正直ない。ただ将来はアイリーンの夫となり2人は夫婦となるので仲良くするのに越した事はないと思っているが、こんな状態では無理そうだ。


「はぁ…」


最近は精神的に疲れて、趣味である読書に没頭する事が出来ない。これまで穏やかな日々を過ごして来たのに何故こんな事に…。


そして明日は城での舞踏会の日だ。無論アイリーンは出席する予定だが、先程ユリウスから連絡があり舞踏会にはレベッカをエスコートする故、アイリーンとは同伴出来ないとの連絡を貰った。


あり得ない。婚約者を放って置いて幼馴染をエスコートする紳士がどこの世界にいるわけ⁈ユリウスがレベッカをエスコートするならば私はどうしたらいいの⁈1人で行けというわけ⁈


婚約者がいるのに他の異性にお願いする訳にはいかない。普通ならば。だが、ユリウスとレベッカはそれをしようとしている。ある意味で素晴らしい度胸だ。周囲からどんな目で見られるか…。それはアイリーンも同じだ。婚約者が別の女性をエスコートしているなど、哀れみの目を向けられるに違いない。


明日の舞踏会が憂鬱で仕方がない。


「はぁ……」


アイリーンは何度目か分からないため息を吐いた。





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