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ユリウスが屋敷に来て嵐のように去った日の翌日。アイリーンは、両親からユリウスとの婚儀について話された。今までは、一応婚約関係ではあったが、何処かボンヤリとしていた関係だった。会う頻度もそんなに多くなく、会話だって社交辞令程度だった筈。
だが、レベッカが現れてからはある意味で距離は近くなった気もしなくはない。
まあ、それは置いて置くとして。そんな関係がここに来て急激に進展を迎える事になろうとは思わなかった。……無論アイリーンの意思など何処にもない。
「ひと月後に、婚儀を挙げる。その前に1度人を集めてお披露目を行う。これはユリウスくんの希望だ」
父から一言そう言われた。アイリーンに、拒否権はない。素直に頷くほかなかった。
「シェルト!」
レベッカは息を切らしながら、両手でドレスの裾を持ち上げ凄い勢いで走ってきた。その光景に、周囲は驚愕するがシェルトは表情一つ変えない。
「やあ、レベッカ。今日はどうしたの?珍しいね」
最近はめっきりシェルトを訪ねてくる事がなくなっていたレベッカ。その理由はアイリーンの所へ押し掛けるのに忙しいという事をシェルトは、知っている。
「こ、婚約破棄って!どういう事なの⁈」
「あぁ、もう聞いたんだ。どうとは?そのままの意味だけど。それ以上でもそれ以下でもないよ」
どうやら怒っているだろうレベッカに反して、シェルトは淡々と話、飄々としていた。その温度差に、周囲は苦笑するしかない。
「違うわよ!どうして、婚約破棄なの⁈私と貴方は、政略結婚なのよ⁈婚約破棄なんて許されないわ‼︎」
「政略結婚だろうと、普通の結婚だろうとね、婚約破棄は出来るんだよ、レベッカ?そもそも君は、それを望んでいたんじゃないの?君はユリウスが好きなんだろう?」
「は?私がユリウスが好き?どうしてそうなるのよ!」
周囲の者達は、顔を見合わせた。これまでのレベッカの行動からして誰がどう見ても、レベッカはユリウスの事が好きに決まっていると思うだろう。
「だって、君とユリウスは公然の場で恋人同士の様に振舞っていただろう?『あんな堂々たる浮気をする人を見た事がない』と今や社交界では有名な話だよ。余りに堂々としてるから、清々しいと君達を支持する者達まで現れる程でね」
舞踏会の後、アイリーンの屋敷に連日押しかけるレベッカとユリウスの振る舞いまで何処からか漏れた様で、更に噂に拍車はかかり、更には先日のお茶会の話も話題になっている。
「僕は、君が浮気しようが誰とイチャつこうが興味は全くないんだけど。父上がね、それはもうお怒りでね……。叔母上も今丁度呼び出されてるよ、父上に」
その言葉にレベッカは、顔色を変える。
「へ、陛下は、お母様の事溺愛なさってるわ。お咎めなんてあるはずない……」
「君はそうやって、国王の寵愛を盾にして、叔母上と一緒になりこれまでも色々と好き放題してきたよね?」
ある臣下の娘は、お人形の様な愛らしい少女だった。レベッカは自分より可愛い少女が気に入らないと母に言い、母は国王に適当に罪状を作り上げ報告、臣下を辺境地へ飛ばした。レベッカの母は、レベッカの生まれる以前から似たような事を繰り返していた。自分より優れている、美しいのが許せない性格らしい。
因みに、レベッカの父には元々婚約者がいたのだが、それをレベッカの母が無理矢理奪った。シェルトの生まれる前の話なので噂程度しか知らないが、本当に呆れたものだ。あの親にして、この子あり。まさに、似た者親子だ。
「う、煩いわね‼︎これまでだって大丈夫だったんだから、今回だって大丈夫に決まってるわ‼︎それと、シェルト!私絶対に婚約破棄なんて認めないから‼︎」
レベッカは、シェルトに当たり散らす様に怒鳴ると、走り去って行った。どうせ、そのまま国王に会いに行くに決まっている。溺愛する妹の娘はまた可愛い様でレベッカ自身も国王に溺愛されている。
いや、されていた、のが正しいかな。シェルトは、愉しそうに笑った。
「全く、どうしようもないな」
「兄上、いらしたんですね」
シェルトは、振り返り声の主を見た。




