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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第七章
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戦闘描写はあと2回予定……

「丁度いい、紛れて殺してしまえ……首を持ってこい。魔王に殺されたって理由なら、民人(アイツラ)も諦めるだろう?」

 娼婦を抱いて玉座にある若者--新王ティプシーは、下卑た笑みを浮かべる。彼にとって前王は抹殺すべき存在だった。

 退位したにも関わらず司祭王と呼ばれ慕われている。かつての勇者が師事したという理由だけで、王となりその名は国の代名詞となった。

 彼の祖父と忠実な部下達が、実質的な権威を持ち治政を行ったからこそ、この国は存在し繁栄しているにも関わらず、だ……。

「恐れながら……魔王は迷宮の管理者であり、国があるのは承認があればこそ--口実にはできません、権威が落ちてしまいます。盗賊か獣の仕業にするのが良いかと存じますが」

「好きにしろ--下がれ!」

 娼婦を突き放し家臣共々下がらせると玉座を蹴る。誰も彼もが彼に逆らう……王と称えながら、彼を見下しているのだ。

(只のお飾りの癖に……)どんな手を使っても抹殺し、この国のトップが誰なのかを証明してやる--そう、心の中で誓う公国王ティプシー・アイファだった……。

                           ◆

「--ご無事を願います」

 スリーエーは使者としてアトルバスタに赴くことになり、従者として下級聖職者が2名、護衛として騎士が1名付いた。

 転送陣はアルヴァロ・マーロと東の平原の端境にある城砦まで一行を運び、連絡が行っていたらしく馬車が用意されていた。

 聞けば、高齢故に体調を顧慮したらしい……馬車に乗り込むと、すぐに睡魔が襲ってくる。馬車の震動が子守歌のように老いた聖職者を眠りに引き込んでいった・・・。

†††††

「なぜ、私なのでしょう……少なくとも、行政官である貴方が適任では?」

「アドエアの住人は俺ではなく、スリーエー殿を選んだんだ。エロエ・マーリム--称号を得たあんたを」

 いつの間に称号を得たのだろう?エクセリの科白に混乱し戸惑うスリーエーは、祈祷所の居室で呆然とする。4人の勇者の内1人だけが特異な存在で、能力的に最も近い彼が教師に命じられた。

 教師と言ってもこの世界を全く知らぬ青年に、必要不可欠なことを伝え、聞かれたことに答えただけ。

「なぜでしょう……」

 溜息を付く彼にその通知が来たのは翌日。

 聖都ドゥーエに赴き巫女王アリセプテから告げられたのは司祭への昇格。アドエアの全権の移譲だった……。

                           ◆

 歓声が上がり独立を祝う民人達。エンジール・ファソナは、魔王同様に特異な迷宮で、アドエアは急速に発展し規模が大きくなった。

 エクセリとその部下が行政を担い、人手不足から採用された商人や元貴族がそれぞれに見合った職に就き、活性化を図っていく。門外漢のスリーエーは、聖職者としての務めを着実に進め、誰もが彼を司祭王と呼ぶようになっていた。が……。

「これは……」

 祈祷所に送られた封書は、その表にはっきりと魔王の印章が刻まれている。恐る恐る触れると空中に文字が現れ綴られた内容に度肝を抜かれた。

--聖職者スリーエー・ソルを王と認め、国たることを承認しよう。

    我が名ワクト・タイェ--“時の放浪者”において覆すことは許さぬ--。

「--息災で何よりですね」

 囁くようなテノールがスリーエー含め聖職者に追い打ちを掛ける。気配も何もなく、腰を抜かし呆然とする彼等の前に現れたのは、エンジール・ファソナの管理者シア・ディーアルだった。

「スリーエー・ソル殿。御身を司祭王と--御身の名を国名とし、承認しましょう。その治政が安からんことを」

 笑みを含む、柔らかく穏やかな佇まいの魔王ラフマ・キナウの言祝ぎとウトピア・ナーウォスの管理者たる魔王ワクト・タイェから届けられた封書。2人の魔王の承認を得て、アドエアはスリーエーと名を変え国と認められた。

 そして、スリーエー・ソルはエロエ・マーリムの称号を持つ、即位した2人目の聖職者となったのだ・・・。

 

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