託卵の魔女
伏線回収……ばかりかな?
「--はて?随分とボロボロだ」
危機感の欠片のないテノールの声が降りかかる。弾かれたように顔を上げ、周囲の変化に一行は混乱を来していた。
手彫りの洞窟を思わせる天井と壁。石畳の床は塵1つなく……彼等を苦しめた少女も魔獣の姿もなく、存在した痕跡すらも見当たらなかったのだから。
「災難だったね?通知はしたんだけど……気付いて良かったよ」
科白を紡ぐのは、前髪が顔の半ばまでを覆う全身白尽くめの魔技--ラヴァン・ソルティス。噂でしか聞いたことのないエンジール・ファソナの管理者、魔王その人だった。
「……なぜ?」
「メンテとマイナーチェンジしてたらBUGが発生したんだ--原因が分かったから回収したんだよ?」
小首を傾げる魔王に知らず安堵し力が抜けるハノ達だったが……セラスの呻きに我に返った。
「しっかりしろ!」
「セラス!」
「--妙な魔法が掛かってるね?献身にも程があるよ」
クリスタルの小瓶を、グイオン--黒魔技に向けて放るラヴァン・ソルティス。慌てて受け取ると小瓶の中で、金色の液体が揺れていた。
「君達のお陰でBUGが消滅したからね。まぁ、災難にも遭ったみたいだけど……“万能治療薬”をあげる、使うといい」
マジマジと魔王を凝視する、想定外の展開が続き思考が付いていかない一行だった。
◆
「ぅ……?」
常に襲っていた全身の倦怠感が消失したのか身体が軽い。夢も見ずぐっすりと熟睡したかのように、スッキリと目覚めた彼は、ゆっくりと身体を起こし……宿泊所の室内に安堵と疑問を抱いた。
「気が付いたか」
アゴニが差し出したハーブティーを受け取るセラス。口に運びながら、記憶を辿ればエンジール・ファソナから別の場所に赴き戦った筈……。
「ハノ=ゾフィーは!無事なのか!一体……!?」
「魔人になりかけてたよ?仕向けられたとはいえ、ね」
問いただそうとしてセラスは絶句した、部屋の入口に佇むラヴァン・ソルティスに・・・。




