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「お友達っ!嬉しいなっ!お友達?」
ハノ達の回りをスキップする美少女。状況が飲み込めない彼等を余所に、キャラキャラと笑い巨木の上を飛びはね、全身で歓喜を表現していた。
エンジール・ファソナの魔王はラヴァン・ソルティスと呼ばれる魔技、目の前にいる少女とはかけ離れている。魔王配下の使い魔や魔人の可能性もあるが……。
「ねぇ?お友達になってくれるでしょ?」
「……」
「ここはどこなんだろう……君は誰?」
覗き込む美少女に引き気味のハノが問い掛けると、気分を害したのか唇を小さく結んだ。
「ルシヌート・ヤールだって言ったわ!これは“化木竜”よ?あたしはお友達が欲しいの!?」
「!?」
強い口調と共に空気が揺らぎ、ズズッ…鈍く重い震動が一行を襲う。衝撃波を伴った咆吼と共に、巨木の恐竜が動き始めたのだ・・・。
◆
「伏せろ!」
ヴォン!長大な首が大気を振るわせて空を切る。それは凄まじいスピードで振るわれるハンマーを思わせ……ガツンッ!バギィィッ!!別のムンヴァにぶつかると、生木を引き裂くように裂けてバラバラと破片--ささくれた薄刃の凶器を、容赦なく一行に降らせた。
「壁よ……《防盾》!」
「お友達じゃない!みんな……変わっちゃえ!“化霊仙女”は大っ嫌い--《変容》!!!」
ハノ達を捕食せんとするムンヴァは、互いに牽制しぶつかり合う度に、積み木が崩れるようにバラバラになっていく。撒き散らされ降る破片は、地面に触れると人型の分身--“化木人”となり次々に彼等に飛びかかってきた。
「《火電球》!」
「《雷撃破》!!」
「--ふっ!」
「《閃光雨》!」
3人の魔技による連続魔法が軍隊蟻さながらのムンヴァスを薙ぎ払い、ハノとランス--銃使の攻撃が突き崩す……しかし、その巨体より生み出される分身は、際限なく増え現れて確実にハノ達を追い詰めるのに充分過ぎた。
「くっ……」
「燃やし尽くせ……ぐぁっ!?」
「セラス!!」
大量の血を吐きセラス--赤魔技が崩れ落ちる。アゴニ--白魔技が直ぐさまポーションと《回復》を使うが、その効果は思いの外芳しくなかった。
魔道具の結界を張り襲い来る攻撃を凌ぐハノ一行。劣勢の彼等を、美少女は最初は憎々しげにしていたが、時間が過ぎる内に楽しくなり嘲りと侮蔑の感情が彼女を支配した……。
「あはははっ!いい気味だわ……お前達も、ムンヴァスになるがいい!!玩具となって、あたしを楽しませて--アーハハハァァ!?」




