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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第六章
76/141

化木竜の森

立ち入り禁止です……

「第五室……」

「ここから先は中級者以上。正念場だ」

 エンジール・ファソナは初心者向けの迷宮と認識されているが、実際には第四室までをそう呼ぶ。攻略者達によると迷宮は12層あり、5層目からは難易度も危険度も一気に跳ね上がり、一瞬の判断が生死を分けると言われていた。

 そのことについては、ハノ=ゾフィー一行が、どの冒険者よりもよく知っている。かつての彼等こそがこの迷宮の最下層--12層を最初に攻略し、生還した冒険者だったのだから……。

†††††

「《雷斬戟(ヴロゥーテ)》!」

 バリッ!バッ・シィィ…ン。グイオンの属性魔法が、灰影人(フェオ・スキア)と呼ばれる魔獣を感電させ消し炭にする。前列が倒れれば後列、後列が倒れれば次の後列--一糸乱れぬ軍隊のような、魔獣の攻勢にセノ達は焦りを覚えずにはいられなかった。

                         ◆

 塵1つない通路が張り巡らされた迷路--それが第五室だった。

 直進、右折、直進、十字路、右折、右折、直進、左折、十字路、後進、左折、十字路、左折、直進……単調な繰り返しに、彼等は知らず疲弊する。怪しい気配も魔獣の影もない、只の通路に響くのは彼等一行の足音のみで、ともすれば眠気さえ伴っていた。

「……大丈夫か?」

「余りに単調で注意が落ちてたようだ」

 アゴニの気遣いをやんわり否定し、セラスは《風小精》に通路の先を探らせる。魔法は干渉されずにスムーズに使えることに安堵する一行だったが……。

「!?」

「--来るぞ!!」

 赤魔技の声に被さるように咆吼が通路を駆け抜け、ザワザワと気配が近付いてくる。魔道具と魔法による2重の結界を張り、歓喜さえ覚えつつ魔獣との戦いに彼等は身構えた……。

†††††

「第四室攻略か……早いな」

「下級卒業だろ?」

 カードを受け取ったハノにセフォンは頬を搔いた。

 登録してから日が浅いにも関わらず、めきめきと実力を付けてきている。パーティーが優秀でも、本人に素質が無ければこうも成長はしない……。

「そうだ。しかし、第五室以降は上級でも厳しい……俺は進めんぞ」

                       ◆

「やっと中級だわ……」

 ハノ=ゾフィーは息を吐いた。

 彼女に掛かっている魔法を解くには、上級冒険者になる必要がある。求めるアーティファクトはアルヴァロ・マーロの大迷宮ウトピア・ナーウォスにあると言われ、かつての彼女一行さえ攻略が叶わなかったの場所だっだ。

 そこへ向かうために妥協は許されない……そう決意し支度を調えるが、気掛かりなのはセラス・エクエスだった。

 魔法のコントロールに長け安定性に定評があったのだが、最近はコントロールが甘く魔法そのものも威力にバラツキがある。その上、体調も余りいいとは言えない状況だった。

「弓を改良してきた」

「いつの間に?頼んでないわよ」

 グイオンが手渡したのは合成弓(コンポジットボウ)。サイズはショートボウと変わらない上に、軽く強靱に作られていた。

「セラスが注文したらしい。軽いのは魔法強化……過保護だな、あいつは」

                       ◆               

「--どういうことだ?」

「魔王から通知が来ただろう?エンジール・ファソナはマイナーチェンジで、入れるのは第四室までだと。第五室以降は立ち入らないように境壁を張るって……どうしたんだぁ?」

 セフォンは宿泊所の主人の科白に青冷める。下級を卒業し中級になったハノ達一行が赴いているのだ。

 境壁--魔王が施した結界に、ギルド配布の簡易転送符は使えない。脱出するには階層の魔獣を一掃するしかないのだが……。

「1組赴いているんだ……」

「そりゃぁ--諦めるしかないな。冒険者は実力だけじゃない。運も必要だからなぁ」

 落胆の溜息を付く主人とがっくりと肩を落とすセフォン。将来有望な冒険者の未来が、事実上絶たれることになったのだから・・・。

 

  

                          

 

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