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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第六章
70/141

魔王の箱庭

成り立ちはこんな感じ

 世界最大と言われるアルヴァロ・マーロ。

 そのほぼ中央に突如出現した丘陵は、その足下にサウファ・アーレムのものとは全く異なる構造物--異世界のテーマパークを抱えていた。

「--場違いだ」

 丘陵の頂にある、宿泊施設(ホテル)--魔王城から眼下を眺め呟く。棄てられ荒れ果てた廃墟は、テーマパークという名の地上迷宮にリニューアルした。

 全てを取り仕切ったのは彼--シア・ディーアルではない。妄執や情念の残滓、幽霊や付喪神のような存在が集い凝縮され、実体化した“意思”--アト・クローウンだった。

『どうです……見違えたでしょう?』

 音のない“声”は陽気に満ちており、振り向けば仮面が笑っているように見えた。

「迷宮じゃないよ、これ……」

『だから良いのです、先ずは人を集めること。初心者向けですし、アトラクションのカモフラージュにもなりますよ?』

†††††

「あり得ないよ……」

 クルム・メレフが呟く。

「どう見ても遊園地じゃの?」

「だが、歪みは解消されている。新しい迷宮が誕生したのは間違いないわ」

 ヘレシャー・グァナンの科白に、クランクルム・サチェドゥーズ--“狡猾なる巫女”の呼称を持つシア・ディーイーが答えた。

 彼等がいるのはスェタナ・イェスチ。透見の魔鏡に映し出されている光景は、彼等の想定の遙か斜め先を行っていた。

「魔王は誰だろう?彼のお方はお隠れになったし……」

「そういえば、あいつはどうなった?連絡付かないぞ!」

 アルヴァロ・マーロの南西、大森との境には小規模の迷宮がある。彼等と同じシア・スェターナが管理していたが、大迷宮のクルヴァーティオ化とそれに伴う事象から、連絡は付かず迷宮そのものも確認出来ないのだ。

「無事ならいいんだが……」

 誰ともなく呟き、重苦しい沈黙に包まれる魔王達だったが……。

 リリ。リリリ…リリ。リ…!着信音と共にメールが彼等の前に送られてきた。

「呼び出しかぁ」

「そんなに長かったかしら?」

 差出人も宛先もないそれに手を触れた瞬間、パシッ!と、乾いた音を立てて人影--道化師が現れた。

『お初にお目に掛かります。多忙な我が魔王(オーナー)に代わりまして、私アト・クローウンがご挨拶に伺いました』

 慇懃無礼で隙のない所作は洗練され、優雅な一礼に魔王達はどう振る舞っていいのか分からず、沈黙を保った。

『皆様がご存じのように、アルヴァロ・マーロに新しい迷宮が誕生いたしました。スェターナ・サート--ラフマ・キナウ様の迷宮にございます。近日中に開園いたしますので、今暫くの間お待ちくださいませ……では、失礼いたします』

 アト・クローウンと名乗った道化師は優雅な一礼と共に掻き消え、魔王達は只呆然とスェタナ・イェスチにいた・・・。

 


 



 

 

 

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