栄光の御手
とりあえず投稿……
アトルバスタ――東の端に位置するその国は、地下迷宮の上……正確には、王廟が迷宮の入口と重なっていた。
そのため、迷宮を攻略し生還した冒険者は魔王から“英雄”の称号を与えられ、王となる。それが、迷宮の管理者たる魔王との誓約だと伝わっていた。
それ故、この国の王は一代限りであり、継承や移譲は成立しない。必要なのは“英雄”たる実力のみ。テロー・グロリアは、仮称とはいえ“英雄”の称号を与えられた冒険者の最高峰だった。
誰もがそうだと疑わない20才そこそこの、金髪に碧眼の美丈夫。金と朱で装飾された漆黒の甲冑に獅子吼の額輪、“栄光の剣”と“破妖の盾”を身に纏う聖騎士であり王候補の筆頭。
その彼と“栄光の御手”を組むのは、“先駆”ライード・エリキュース――銃使。“助言”アル・ナーサフ――黒魔技。“聖女”ヴァタラ・ファウ――白魔技。“挑戦”タシャ・ネジャル――女傭兵の4人であり、冒険者達の尊敬と畏怖を一心に浴びる存在だった。
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テローの元に、ギルド直々の依頼が来たのは春季3月の半ばだった。
始まりは、ある迷宮の生還者が持ち帰った仮面。金属製のそれは、アーモンド型の眼を持つ以外の特徴が無いのっぺりした金属製のそれは、怪しい気配を帯びた代物だった。
人手を渡り転々として辿り着いた先は富豪の処。令嬢は国主催のパーティーで使おうとして呪われてしまったらしい。
呪いは令嬢そのもの変容させ甚大な被害をもたらした。
呪いを解こうと魔技や聖職者は尽力したが令嬢は死亡し、呪いを調べる中で分かったのは、仮面以外にも呪われた品物が流れ、似たような事態が報告されていたことだった。
しかし、生半可な実力では攻略は覚束ないだろうと、テローの元に依頼が来たのだった。
4日後には、テローはアトルバスタの王として即位することが決まっている。“栄光の御手”最後の迷宮攻略であることも明らかで……名実ともに“英雄”になるために相応しいと、5人は了承した。
アトルバスタの貴族を始めとする人々も、テローの意思を歓迎し一行の迷宮攻略を信じて疑わない。万一を危惧したのは実質上のトップ、宰相ミカルディス。
彼は思案の結果、12人の近衛兵と記録係1人を選び“栄光の御手”に同行させ、翌日早朝に総勢18人でアルヴァロ・マーロの迷宮攻略に赴いたのだ・・・。