秩序の担い手
新しい称号を得ました
--同年、春季4月。
「なるほど……“英雄”は堕ちたのですね」
宰相ミカルディスは獅子吼の額輪を手に取る。“英雄”テロー・グロリア率いる“栄光の御手”は、スェターナ・サート攻略に失敗し、帰還は叶わなかった。
「生還され、証をお持ち頂いたことに感謝します」
「我々は攻略出来なかった、魔王の気紛れに過ぎないんだ」
ヴィクトールの科白にミカルディスは破顔する。気紛れであろうと、スェターナ・サート攻略に赴き生還したという事実は重い……パーティー全員が無事であれば尚のこと、重要度は増した。
「貴方方は攻略に赴き生還した、“栄光の御手”は失敗し帰還しなかった……この事実は覆りません。私は、彼等を初めから“英雄”とは認めていませんし。ね?」
その科白にヴィクトール達は唖然とした。
「このアトルバスタの迷宮を1度も攻略したことがないのですよ?どうして認められましょう。」
曰く--彼等が“英雄”とされたのは、ギルドの推薦と他の候補がいないという理由が大きい。又、アトルバスタの貴族達の圧力と、王座が空位であったことも要因となっていた。
何より、“英雄”でありながら証明となる迷宮攻略は、ギルド長直々の依頼攻略で先延ばしにされてきた。
ここに至って貴族達も“英雄”に相応しいのか。と、疑問を呈するようになった矢先に、スェターナ・サート攻略がギルド長直々に依頼された。
彼等を擁護する貴族達はこぞって子息や子飼いの騎士を同行させることを求め、何があっても責は自らが負うと請け負い大人数での攻略となったのだ。
「これがあれば貴族達も目を覚ますでしょう……ギルドに対しても説明を求めることも出来る。つきましては、今暫く逗留して頂きます。事の詳細を確かめねばなりませんから--」
非公式の賓客として遇されることになったが、それは事実上の拘束。軟禁と同義だった・・・。
†††††
「ど、どういう……」
「誤魔化しは通用せぬ、そなたが就任する前後から現在に至るまでの経緯は、調べが付いているのだ。我等の信を愚弄し、多くの冒険者達を蔑ろにした罪過は重い」
宰相ミカルディスは“栄光の御手”に阿いた貴族達を失脚させ、ギルド長の更迭と人事の刷新を推し進める。その中で、彼はヴィクトール達の過去の事情を知った……。
「--“英雄”ヴィクトール・セライ殿。アトルバスタの王への即位が満場一致をもって承認されました。戴冠の儀お受けください」
臣下の礼を取るアトルバスタ宰相ミカルディス。ヴィクトール達は想像だにしない展開に戸惑う。彼等は称号も持たない無名の、価値の低い冒険者でありギルドからの推薦も何もなかったのだから。
「無茶だ!」
思わずヴァルクが叫び慌てて口を塞いだ。
「貴方方は過去に迷宮を攻略されている。この事実を見落としたのは我々の落ち度……条件は全て整っているのですから--」




