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「貴方方を採用して良かったですよ、オーナーが近い内に覗きに来るかも知れませんね」
その科白に弾んだ笑みを見せる芸人達。決行の日は近いと期待し、その期待は現実となる。その日もいつもと同じようにパフォーマンスを繰り広げ、セアの剣舞が始まった。
いつもよりも派手に、優雅で洗練されたパフォーマンスに歓声と感嘆の溜息が漏れる。誰もが釘付けになり……グラウ達はラヴァン・ソルティスを見つけた。
白い魔技の周囲は綺麗に人垣がない。長手袋に包まれた手が拍手を送り、楽しんでいるのか口元には笑みがあった。
(いくぞ……)気配を殺し人混みを抜けた。
マグスはカードマジックを披露しながら人垣を遠ざけていく。充分に近付きグラウが軟体芸を駆使して身動きを封じると、喉を締め上げ窒息させた。
詠唱を封じるためだが、ごきりと音がしラヴァン・ソルティスはそのまま崩れ落ちる。余りの呆気なさに訝しむ彼等は、観客達の悲鳴にハッとした。
「ひ、人殺しだぁ!!」
パニックを起こし逃げ惑う人々。足下には気絶かそれとも絶命したのか白尽くめの人物が倒れていた。
「おやおや……」
嘲笑を含んだ声が降ってくる。面白そうに首を傾げるのは道化師アルデ、“御使の羊”のメンバーだった
「アルデ?」
「誰のことかなぁ……とうにいないぜ。それに、マグスってぇのは、あんたに殺されちまったがね」
「!!」
白い外套を取り払い絶句する。不自然に首が傾いた屍体の顔は、間違いなくマグス・アウルだった。
「いつもは遺品回収やってるんだが……いやぁ、お天道様が眩しいぜ」
リアは観客に混じってガルディノからの脱出を図っているはず--ならばとロディがアルデに斬りかかった。
「ありゃ……まだくっついてなかったか』
ロディのナイフを躱したが、ズルリと首が落ちる。地面に着く前に髪を掴む手--。
『人間てぇのは、無謀なことをするよ--俺はザイフ・シラマーニ。魔人っていうのか?この迷宮の従業員さ』
魔人は、アルデの生首を自らに乗せるとずれないように固定する。見る間にアルデの首は繋がり、グラウ達は度肝を抜かれた。
『折角の採用だというのに、残念ですよ』
2色の仮面を着けた道化師の傍らにはリア……正確には、リアの上半身を頭に持つ駱駝鳥がいた。
「くそっ!」
目論見が失敗し残った3人--“御使の羊”は、覚悟を決めそれぞれが魔人と道化師に挑んだ・・・。




