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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第五章
56/141

「随分と集まってるみたいだね?何人採用されるかな」

『彼等次第でしょう、報告をお待ちください』

 優雅な礼をしアト・クローウンは姿を消した。

 今いる従業員は半数近くが人ではない存在達で、芸人は亡霊や妄執が宿ったマネキンだったりする。そのためか、パフォーマンスは芳しくなかった。

 物珍しさが薄れれば入場者が減る。そこで導入したのが従業員募集、この企画は当たりパフォーマンスは充実してきたのだが……好奇心に勝てず迷宮に入ってしまったり、人ではない存在になってしまったりと、長続きしないのだ・・・。

†††††

「すげぇ……」

 その感想は芸人達の心中を代弁する一言。誰が発したとも分からぬ自然に出た感嘆だった。

「よく、おいでくださいました。皆様」

 その快活な声に振り向くと、彼等が知るどの様式にも属さない派手な衣装を纏い、白と黒の二色の仮面を着けた道化師が佇んでいた。

「オーナーに代わりまして礼を述べさせて頂きます……早速ですが、パフォーマンスを見せて頂きましょう?」

 指定されたのは噴水広場。道化師によって無作為に呼ばれた芸人が次々にパフォーマンスをしていく。

目を引くようなパフォーマンスもあれば、状況に舞い上がったのか失敗したパフォーマンスもある……。

「ふむ、なかなかの出来ですね。焦らずとも始まったばかり--採用者が出るまでは宿泊していただきますよ。経費は全てこちら持ち、心配せず寛いでくださいね」

                       ◆

「こう簡単に入れるとは思わなかったぜ」

 芸人達は与えられた施設の快適さにはしゃがずにはいられなかった。

 清潔で柔らかな寝心地の良いベッド、提供される料理は彼等を満足させるのに、充分過ぎて夢ではないかと思うのも無理はなかった。

 その芸人達の中にあってエフェス・ハーラ、アス・ラドの2人はぬかりなく様子を伺う。彼等”2人は“御使の羊”と協力関係にある一座に属し、情報収集を得意としていた。

 数ある中で、スェターナ・サートの情報は些細なものでも高額で取引をされ、今回は便乗という形で情報収集に努めているのだ。

 一方、グラウ達は明日の段取りを組み立てる。彼等の目的は情報収集ではなく、無謀なものだった。

 複数いる魔王の中にあって、彼の魔王は冒険者に姿を見せることで知られている。その殆どはショフェール・クファルだったが、気が向けばガルディノでも見ることが出来る。人混みに混じって芸人達のパフォーマンスを眺めているのだ。

 それを逆手に誰もが思いつかない、思いついても実行しようなど考えられない--事を実行しようとする者が現れた。

 手立てはないように思われたが、どうしても実行しようとその者は隊商氏族に働きかけた。

 その結果、魔王暗殺という無謀極まりない依頼は通り、白羽の矢が当たったのが“御使の羊”だった・・・。


  


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