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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第五章
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御使の羊

従業員募集……大幅修正しました

 セア・ラス-ルは、丘陵から湿地帯とその先に見えるアルヴァロ・マーロに強い既視感を覚える。各地を転々としたが、この場所に来た記憶はない。にも関わらず、こうして見下ろしていた感覚があった。

「どうした?」

「……何でもない」

「明後日にはショフェール・クファルに着く。本番はそこからだ--」

 商売道具と芸人を載せた馬車が、ずんぐりむっくりの体型を持つ羽のない駱駝鳥に引かれ、がたがたと音を立てながら荒れた道をゆっくりと進む。

「本当に受けるつもりなのかな?」

 道化師の仮面を手にアルデ・ログが呟いた。

「大きな声じゃ言えないが、ごり押しらしいぞ」

「……何考えてんだろうねぇ」

 ロディ・セルスとリア・ソルも首を傾げ、あれこれと憶測を述べる。それを聞き流し、セアはここまでの経緯をなぞった・・・。

†††††

「仕事だ、アルヴァロ・マーロに赴くことになった。親方直々だからな気を抜くな」

 セアは、各地を転々としパフォーマンスを披露する、芸人を生業とする暗殺者の1人で、隊商氏族に組みする暗殺集団“御使の羊”に籍を置いていた。

 2m近い巨躯の軟体芸を得意とする座長グラウ・ドーナ。道化師アルデにナイフ投げのロディ、駱駝鳥使いのリアに剣舞のセア--この4人が一座の固定メンバー。彼等以外の芸人は生粋の者が多く、その都度入れ替わり、一度きりの場合も多かった。

 目的地のアルヴァロ・マーロにはスェターナ・サートがあり、そこは地下に拡がっていると考えられている。地上にあるガルディノ--上物の遊園地は、そのカモフラージュだから一般者が行き交うのだと言われていた。

 そして年に2度、ガルディノは従業員を募集する。一般者を飽きさせず楽しませるには、人でなければ難しいと言うのが理由らしい。

「多いだろうなぁ、条件が良いらしいぜ」

 噂では衣食住が保証され、心付けやチップはそのまま収入となり、没取されなず、ノルマもないらしい……その代わり、腕が悪ければ即首になり、一度安寧な日々を過ごした芸人は、使いものにならないらしかった。

「補充はショフェール・クファルでやる。単独ではないからな」

「単独じゃないって……?」

「今回の仕事は複数で当たる、大掛かりな仕事だ。只し、先を越されるな」

†††††

--世界暦2025年、春季4月。

 ショフェール・クファルは暇だった。

 ガルディノは年に2度行われる求人募集で、約1ヶ月の休業期間に入っていた。

 迷宮自体は年中無休で、スェターナ・サートの攻略に赴く冒険者達はやって来る。しかし、親子連れやカップルなどの一般者は来なくなり、冒険者もその数が減っていた。

 代わりに集まるのが芸人達で、彼等はガルディノの従業員に採用されようとやって来る。だから、宿泊所の主人は芸人達を品定めし、採点しながら暇を潰すのが日課となっていた・・・。 



 

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