新たなる旅立ち
お気の毒様です
「あんたが一緒なら心強い」
無名だが折り紙付きの実力を持つ中堅冒険者一行は、タレー・デュオを快く迎えてくれた。
依頼は果たしたものの、仲間を失い“鷲獅子の鈎爪”は全滅。その痛手にタレーは、自棄酒と喧嘩に明け暮れる日々を送っていた。
ある日、ギルドから誰もが嫌がる新米冒険者のフォローを、飲み代の立て替えを報酬に引き受けた。
実力はあるが、根が素直なのか鴨られやすいその冒険者に同行したのは3ヶ月余り。依頼は成功し、冒険者の性からは逃れられないのを自覚した。
そこからは小さな依頼を積み重ね、短期だが2度ほどパーティーを組んだ中堅冒険者一行から、正式に誘いを受けたのだ。
「役に立てるかどうか……俺でいいのか?」
「俺達は初めてだし、自覚ないかもしれないが……あんたを目標にしてる奴は結構いるんだ」
「そうだよ?どんな形にせよ、生還したっていう事実は大きいんだから、あたい等は運が良い」
そう言われタレー・デュオはそのパーティーに加わる、案内役兼前衛職として・・・。
◆
「……あんたには礼を言う」
ショフェール・クファルに到着した一行は、さっそく宿泊所に部屋を取り迷宮攻略の準備を始める。タレーも準備しようと1階に降りたが、そこで彼は奥の席に陣取る魔技を見つけた。
占っているのか、3人の冒険者と話している。暫く眺めていると冒険者達は足早にタレーの横を過ぎ、宿泊所を後にした。
意を決して近付くと文句の1つも言おうとする。しかし、出たのは礼を述べる言葉だった。
「おや、生還したんだね?又、占ってみる?」
白い魔技は口元に笑みを浮かべ、彼に小首を傾げて見せた。
「俺は、冒険者を止めない。それだけが言いたかった--」
立ち去る冒険者に口元の笑みが深くなった。
迷宮に冒険者は必要不可欠な存在。彼等がいなければ迷宮は成り立たないのだから、続けるという宣言は最高の褒め言葉と言えた。
風変わりな魔技として対応された事で、印象に残っていた冒険者は……前回と違い、彼がどのような存在か知ったはずだ。にも関わらず、止めないと告げたのだ。
「--頑張ってね」
遠ざかる背中に《祝福》を掛け、行く末に期待するラヴァン・ソルティス--シア・ディーアルだった・・・。




