鷲獅子の鈎爪
6話目投稿
「待たせて済まない」
食事をしていたタレーは軽く手を上げただけで気にもせず、4人分の飲み物を注文した。
「依頼の品は渡してきた、報酬はこの通り」
シルフォ・アウェーク――自称“はぐれ盗賊”は、革袋をテーブルに置いた。
「報酬とはいえ多いな」
口が達者で目端が利くので交渉事の殆どを任せており、その手管に信頼してはいるが、依頼報酬の銅50枚(¥25,000)に銅20枚(¥10,000)が上乗せされていた。
「あら?必要経費も込みらしいから」
リリア・テグレトール――黒魔技がとぼけたように告げて席に着く。彼女は誘惑せずとも相手の方が上せてしまう程の美魔女……依頼人は、報酬の上乗せを無自覚にしたらしい。タレーはそう判断して、もう1人の仲間がいないのに気付いた。
「見当たらないが……」
「――年を考えておくれよ」
エスト・ラーラ――白魔技がシルフォの背後からひょっこりと姿を見せる。幼女にしか見えない外見は、追っ手の目を欺くためだが、周囲はタレーの娘か何かだとしか見ておらず内心で溜息をつく。が、タレーをリーダーとする冒険者一行“鷲獅子の鈎爪”が揃った。
「いつ出発するの?」
「――明後日だ」