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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第四章
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勇者対勇者

魔王は1人しか必要ありません

 グラッ……!突然に大地が揺れ、幾筋もの地割れが走る。大気が震え、クルヴァーティオは鳴動と共にゆっくりと沈んでいく。地割れは更に拡がり大量の水がそこから溢れ出した。

「上がれ!」

「勇者殿!?」

 一行は迫る水を避け丘陵へ上がるが、エロエ・ヴァイスはその場から動かない。舐めるように手を伸ばす水は、草原を飲み込みつつ彼が佇む場所だけを避け満ちて……水に飲み込まれていくクルヴァーティオがチカチカと明滅して爆発し、水煙の中から“何か”が出現した。

 マウロサと騎士団は怖気を覚え、“何か”を凝視するしかない。手と思しき代物が5つ、それが水に触れると、どろりとした闇色の粘体となった。

 そして水の中を滑り渡ると、エロエ・ヴァイスに飛びかかった。

「《水霊天使》」

 呟きに指輪が光り、現れた存在は粘体を摂り込み元の水に戻す。その繰り返しが続くが……眩光を放つ人型が現れた。

「《闇霊天使(ラックスフェルール)》--堕ちよ!」

 “何か”が咆吼し応えるように、闇と血の色が混じった巨大な蚯蚓が水面を突き破って出現。その先端が裂けると八頭の大蛇となって襲い掛かってきた。

 眩光の人型は大蛇を摂り込んで濃闇に染まりそのまま水に溶けた。

「《絶対防御》」

 丘陵で成り行きを見守る一行は、その魔法がアドエアで体感したものと同じだと認識する。魔法は使えず外の音も震動も一切聞こえない空間に、彼等は飲み込まれていたのだ・・・。

†††††

「なるほど……あの方が言われた通りだ」

 ウトピア・ナーウォス--“桃源の聖域”。アルヴァロ・マーロに存在する最大規模の迷宮を管理するシャン・ディーアルは、4人の勇者によるクルヴァーティオ浄化に注目する1人だった。

 3対1に分かれた勇者達に失敗だと判断した。が、思いがけずシャン・ディーイーから、宴への参加を要請された。

 曰く--“あれ”は勇者ではなく魔王が相応しい、成功するのは確定していると--。首を傾げつつ注目していれば、最上位の魔王の言葉に間違いはなかった。

「手土産を考えねば……」

 くらりと目眩が襲い、肘掛けを強く握ってやり過ごす。疲れはしないが、不意を突いて襲ってくる目眩は、彼にタイムリミットを知らせているかのようだ。

(まだ、大丈夫だ……)自分に言い聞かせ、物見鏡に映る勇者達の攻防を注視するシャン・ディーアルだった・・・。

 

  


 

 



 


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