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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第四章
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祝福と加護

「記録係殿?」

 アルオが青ざめへたり込むマウロサに声を掛けた。

「あ…す、すまない。勇者殿、本当に重ね掛けを?」

 只ならぬ様子の聖職者に詰め寄られても、エロエ・ヴァイス--至人は穏やかに佇んでいた。

「僕は、ずっと《祝福》してきたからね?強化さえすれば、疲れもしないし怪我することもない--不死身だから、確実だと思ったんだけどねぇ」

「分かっていて--!」

「だって……彼等が望んだんだよ?危険だと伝えたし、警告もしたけど。彼等は《加護》を求めた--不死身ではなく、目に見える結果を望んだんだ」

 悪意の欠片のない科白と口元の笑みに、マウロサはクルヴァーティオに突入した勇者達の末路に愕然となった。

「一体、どうしたんだ?何を驚くんだ……」

 ラグランの問い掛けに諦めの笑み浮かべ、マウロサは口を開いた--。

                        ◆

 この世界では魔法は基本的には誰もが使える。素養(魔力)は血に溶け込んでおり、聖職者や魔技は生まれつき素養を自由に扱えるという才能がある。この才能がなければ、素養は魔法に還元出来ず使えなかった。

 世界には8つの属性と無属性があり、2つないし3つの属性を持つのが一般的とされる。無属性や単一の属性しか持たないの者は珍しい。無属性の保有者は例外なく魔技となり、単一属性の保有者でも光属性に特化した者は、聖職者になるしか道はなかった。

 光属性特化の聖職者に現れる“治癒師”は、希有な存在として半ば伝説と化している。その“治癒師”を、目の前の青年は特性として持っていた。

 魔法は防御系、回復系、攻撃系の3つの系統があり、どの属性も共通している。しかし、その特性故に攻撃系は全く無く、防御系は《防御》のみ。回復系は《治療》《治癒》《回復》の3つに統合され、“治癒師”固有の《治》《祝福》《加護》が加わっていた。

 この中で特殊なのが、《祝福》と《加護》。《祝福》の上位変換が《加護》であるということは、知られていてもその関係性を知るものは聖職者にしか存在しなかった。

「《祝福》は1つの願いに1回の制約があり、叶えば無効になる。願いを少しずつ変えて掛けていくことで、上書きされ強化しレベルが上がっていく。一定のレベルになれば、《加護》が使えるようになり--」

「それで?」

「これは、アドエアの聖職者--友人に聞いたのですが、《加護》は対象となる者が望まなければ、効果を発揮しないとか。又、《加護》に打ち消され上書きされるのはレベルの低い《祝福》であって……充分にレベルが上がった《祝福》に《加護》が重なると、上書きではなく統合されて《復活》という最上位の魔法になるのだそうです--」

「--だから、彼等は大丈夫だよ?発動する条件は死ぬこと。死ぬ度に身体も魔法も強化されて、最も万全の状態で復活する……彼等は、それを望んだんだ」

 どこまでも穏やかで平静なエロエ・ヴァイスに、一行は愕然とする。あくまでも、目の前の勇者は善意で……本当に悪意も何もなく、剣の切っ先を突きつけられたにせよ、3人の勇者が望んだから掛けたのだ。その結果を認識しても尚・・・。







 

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