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4話目投稿
「……」
「気配は……ないね」
誰ともなく呟き1階を見回るが人の気配が全くなく、がらんとした無人の空間だけがあった。それぞれが何かしらの痕跡を探したがが、魔法の気配さえ感じられなかった。
しかし、警戒を緩めることは出来なかった。寧ろ、こういう状況だからこそ警戒を怠ってはならないと、経験から識っていた。
「嬉しいなぁ!」
語尾にハートマークが付いていそうな歓声に、身構えた5人はそのままの状態で固まった。
動くのは眼球と喉のみ、石になったかのように身じろぎ1つ出来ない状況にあった。
「貴方達のような優秀な冒険者が、こんなに早く来るなんて――はて? 声までは封じてないんだけど」
気配すらなく彼等の前に佇むのは、フード付きの長外套を纏う魔技。白手袋の特徴的な紋章にヴィクトールは釘付けとなった。
それに頓着せず魔技は無造作にフードを取ると、前髪が顔の半ばまでを覆う鬱陶しい外貌が現れる。ばさりと音を立てて外套が羽織り直された瞬間、視界が白く染まった。
そう見えたのは、身に纏う長衣――豪奢な銀刺繍が施された、染み1つない真っ白なローブのせいだったが、彼等一行は強い焦燥に駆られていた。
そして、今回の探索が経験してきたどの迷宮よりも難易度が高く、危険性の強い代物だと実感させられた瞬間であり――。
「初めまして――そして、ようこそ!」
満面の笑みを湛え楽しげな文字通りの白い魔技の科白は、絶望へのカウントダウンを告げていた・・・。