待たされしもの
……魔境のラスボス
「抑えきれないな、これ……」
被害を最小限に食い止めるためでもあったが、《封縛》でクルヴァーティオを閉ざしたのは禁忌を破らざるえなかったからだ。
“理”は彼にとって神と同義。歪みは世界の脅威であり取り除かねばならないのだが、“理”からの影響を絶たなければ、彼が行おうとする行為は成り立たなかった。
勇者を表すチョーカーを無造作に外す。白い喉にくっきりと浮かぶのは、彼がいた世界で最も恐れられる女神の紋章だった。
勇者としての特性は“支配”。紋章を強化し、その効力を最大限発揮するのに最適なスキルだった。
クルヴァーティオ自体は2度の勇者によってほぼ浄化されている。だが、完全な浄化は出来ていなかったし、彼には浄化するだけの力がなかった。
「慈悲深き畏怖の女神……御身に、我が命を。誓約にて我に力を--!!」
呪句と共に彼は自らの首にグラディウスを当て横に引く。鮮血が撒き散らされ、ついさっきまで生きて戦っていた勇者--若者は、屍体となって地面に倒れていた。
血に溶けた素養が大地に染み込むにつれて、それは石化し塵と化していき……無限とも言える増殖は抑えられた。
体内で生み出す糸で転がる肉塊や屍体を継ぎ接ぎ、それ--“蟲”は絶滅を免れる。一方クルヴァーティオは完全に外界から隔離され、閉じこめられたパウクは変容した。
最も相応しい形態と能力を獲得するために、いずれ現れるだろう獲物を捕らえるために・・・。
短いです




