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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第三章
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引き続き投稿

 アドエアの行政官エクセリは、執務室の窓からクルヴァーティオを遠眼鏡で観察する。3度目に召喚された勇者の《封縛》は健在で、今日も何も起こらなかったと確認し安堵していた。

「失礼します……ディスカ地区で火災が発生しました! 被害は甚大--」

「失礼します! 火災は鎮火--負傷者も治療を受けています。只、住居を失った者が多いです」

「失礼します。ドゥーエより建築技師と食料などの物資が到着しました!!」

 次々に入ってくる部下達の報告に、エクセリは大きな溜息を付く。聖都ドゥーエの属邦となって10年、今まで大過なく良好な関係を築いてきた。

 それが、最近は揺らいでいる。原因は誰もが分かっているが、取り除くのは不可能だった。

 今まで召喚された勇者は常に1人、エクセリ自身は今回の勇者召喚が初めての出来事。資料や伝聞でも横暴ぶりや傍若無人さが取り上げられていたが、1人故に対処自体に苦労はなかったらしい……。

「又、勇者か……若造か?双子の方か?」

「……片割れです。火災を起こしたのは少女でしたが、とても綺麗な石を貰ったそうです」

「少女は……」

「彼の方が助けたそうで、それで事情が分かったのです」

 その話を聞き椅子に深々と腰を下ろした。

「よくお出でたものだ……」

「治療院をよく利用されておりますから、行き会わせたとか」

「そうか」

 エクセリは外套を手に取ると部下と共に執務室を後にした・・・。

†††††

「又、あいつが邪魔をした……」

 吹雪は吐き捨てる。たまたま見かけた少女に、棄てようと思っていた魔雫を渡した。

 魔法の練習中に偶然出来た魔力の結晶だが、彼にとってはがらくた。どう使うのかと思っていたら、火事が発生し大騒ぎになっていた。

 ここぞと事態を収拾すれば、勇者として彼の名声は挙がる。しかし、事態を収束させたのは役立たず……攻撃魔法を持たない勇者だった。

 相手を殲滅してしまえば必要はない防御。効果があると感じない《祝福》を掛け続けているのも、吹雪には屈辱だった。

 指導役の魔技に指摘されなければ、魔法が掛けられていることに気付かなかったのだから、屈辱以外の何物でもなかった。

「あいつだろ?いい手があるぞ」

 双子の感覚故か、不機嫌な吹雪に一颯が持ってきたのは、至人に無力感を味合わせようと思いついた提案。

「手は打ってあるんだ」

「あいつがいなかったら、無駄だろ?」

「いてもいなくても一緒さ--凡人なんて必要ないんだから」

 悪巧みに盛り上がる2人の勇者を冷ややかに眺め話を聞き終えると、“それ”はゆっくりと移動しアドエアを、ドゥーエを離れる。

『--困ったものだ』

 音のない呟きと共に、“それ”--使い魔は主人である魔王の元に急ぐ。同じように他の魔王の使い魔や使徒も急いでいた。

“魔境”浄化は勇者にしかなしえない。迷宮の管理者である魔王は見守るだけしか出来なかった。

 だから、勇者の動向と“魔境”の状態を把握しなければいけなかったのだが、今回の勇者はろくでもない思考の持ち主だったと、使い魔は魔王の元に急いで向かった・・・。

 


 

   

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