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「ふむ……吹雪様は火と風と光の属性、一颯様は水と氷と雷属性をお持ちです」
「そうなんだ」
「現在はLv3まで上がっておいでですから、そろそろお会いしても良いでしょう」
その言葉に首を傾げる少年2人。ニュアンスから他にも勇者と呼ばれる存在が、いるような感じがした。
「この杖は純度の高い魔鉱石を削り出した特別製の代物――勇者であるお2人に相応しいかと」
恭しく差し出された杖を手に取ると、試しに魔法を使ってみる。目標も何もなく発した魔法は、思いの外威力があり上位魔技クライスは咄嗟に《結界》の魔法で影響を最小限に留めた。
「すっごーい!!」
「正に魔法使いだ!ゲーム以上だよ!?」
テンション高くはしゃぎ廻る2人の少年に、胃の痛みを自覚した。
子供であっても勇者だから、彼等の我が儘に振り回されても怒ることが出来ず、甘受せざるを得なかった。しかも、それを充分に理解する狡猾さもあり度が過ぎた……災害と言える悪戯を仕掛けてくる。被害を被るのは主に民人で、罪悪感などなく苦しむ彼等を平気で罵倒し嘲笑うのだ。
過去の勇者と比べても、ここまでひどい存在はない。出来るならさっさと元の世界へ戻したい……しかし、“理”によって召喚された以上は、目的を達成するために割り切ろうとする黒魔技。
「――魔法には細心の注意が必要です。油断や過信は禁物ですよ?」
「分かってるよぉ……だ!」
「天才なんだ――そこらの奴と一緒にするな」
一礼し立ち去る背中に舌を出すと、次の悪戯の相談を始めた・・・。
†††††
「へぇ?他にもいるんだ」
「はい。3度の召喚でも浄化出来なかったのです……幸い今回は勇者が4人。お力を合わせて浄化をしてください」
クライスの科白に2人は内心でムッとする。声に出さなくても一卵性の双子なので、お互いの考えが分かっていた。
天才少年と言われた彼等と対等の存在がいるのは認められない。元の世界では、子供だからと下に扱われた。
羨望と嫉妬で2人を貶めようと画策する凡人共から、勇者が出てくるのは許せない。お互いに目配せをし、これから行われる対面で取るに足らないなら潰そうと企む吹雪=マルヴァ・ジータ、一颯=マルヴァ・ジータだった・・・。




