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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第三章
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連続投稿

--世界暦1260年、秋季(オシェ)10月。

 アドエア――聖都ドゥーエの属邦は、クルヴァーティオによって壊滅の危機に陥っていた。

 魔王の不在は長く、3度も勇者召喚を行ったにも関わらずクルヴァーティオ浄化は果たせないでいた。そのままならアドエアは勿論だが、ドゥーエさえ壊滅する危険性があった。

 しかし、3度目の勇者は浄化出来ないならばと、命を対価に《封縛》し、累が及ぶのを防いだ。

「勇者はどうしても必要……方法を変えます」

 巫女王アリセプテの命令で3カ所同時に行われた勇者召喚。それは何れもが成功し、4人の勇者候補がこの世界に引き込まれるという結果を出した。

「ようこそ、勇者候補殿」

「はぁ……?」

 戸惑いは一瞬、眼鏡を押し上げゆっくりと見回す。どこぞかの世界遺産とも思えるその空間は、極彩色の装飾が施され荘厳の一言に尽きる。目の前には俗に言う美魔女、その背後には5人の美少女が控えていた。

「ここはどこだ?」

「サウファ・アーレムと呼ばれる世界です、勇者候補殿。貴方様は、クルヴァーティオ浄化のために召喚されました――元の世界に戻るには、勇者になるしか方法はありません」

 ファンタジーに定番の異世界トリップ!?相手に気取られるのはプライドが許さない。が、無意識にネクタイを緩め、目の前の美魔女を只見つめた・・・。


「やはり勇者ですね。“破妖の剣”を自在に扱える者は他におりません……支度が調うまで暫しの時が必要なので、ごゆっくりとお過ごしください」

†††††

「さすがです。これほどの魔法を扱えるのは勇者方しかおりません!」

「当然だよ、ゲームと一緒だもん。天才ってのは僕のことを言うんだよ?覚えといて」

「僕等だろ?いつでも浄化にいけるんだから、黙って付いてきたらいいんだ」

「支度には今暫く必要です、ごゆっくりとお過ごしください。赴けばゆっくりは出来ないでしょうから」


「ここ何処?」

「ゲームの中っぽいぞ?」

 2人は突然のことにきょろきょろとする。魔法使いのような3人の男と足下の明らかな魔方陣に、彼等は歓喜を隠せない。ファンタジーに定番の異世界トリップ……魔法があるに違いない!ワクワクと男の科白を待っていると、2人が考えた通りの展開になった。

「ようこそ、サウファ・アーレムへ……勇者候補殿。お二方はクルヴァーティオ浄化のために召喚されました。どうぞ、勇者におなりください」

 ハイタッチをする双子の少年に、召喚を行った魔技――魔法司セフォセフはきょとんとする。過去のどの召喚でも、勇者候補は戸惑い、パニックを起こす者もいた。

 飲み込みが早いし話が通りそうだが、明らかな未成年に戸惑う。巫女王直々の召喚によって現れた勇者候補は、成人男性で高飛車な上傲慢らしい。対応如何によっては、協力体制が取れない可能性もあり、一抹の危惧を抱いていた。

 そこに、10代前半と思われる少年が2人、勇者候補として召喚されたのだ・・・。

†††††

「ようこそ、勇者候補殿……?」

「ぁ…ごめん。人慣れ、してなくて……」

 急に倒れた青年を、聖職者――司祭長ユーリフは慌てて抱き留める。勇者候補としていきなり召喚されたのだから、こういうことはある……数は少ないが、過去の召喚でもあることなので気には留めない。しかし……前髪と意識を失っていることで、瞳の色は分からない。だが、灰色がかった銀髪はこの世界でも見たことがない珍しい色で、興味を引かれた。


「ごめんね?戦えない勇者で……」

「好きこのんで戦う必要はありません。私のことなど気になさらぬように……今までの勇者は1人。今回は4人なのです、護るための力なのですから自信をお持ちください」

 何に付けネガティブな青年にユーリフは言いつのる。勇者候補として召喚されたこの青年は、完全に戦いには不向きだった。

 勇者は特性と呼ばれるスキルを1つ得る。光という単一属性だけでも稀なのに、“治癒師(クラル)”という特性――これが何を意味するのか――を得た彼を、他の勇者は馬鹿にしている。最も、彼等3人はこの国の住人をも見下していたが……。




  


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