勇者召喚
過去編になります
「――勇者?夢だ、な」
『ちょっ!夢ではないの!? 貴方は“理”に召喚されたの』
淡く輝く乳白色というのか……光に包まれた上も下も分からない空間に、身体の線がはっきりと分かる薄絹を纏った美女がいた。
膝を付き覗き込むようにしているため、豊満すぎるボディがいやでも強調される。声ではなく頭の中に直接響くような声は周囲の状況も含め、現実感が乏しかった。
明晰夢と言うやつだろうか?ぼんやり思っていると……。
『夢ではないの!寝たら消滅してしまうわ!!』
耳元で大声を出され起きざるを得ない。改めて見回しても、夢という単語しか思いつかなかった・・・。
†††††
「あいつらは任せた――そうだ、念のために魔法を掛けてくれ。お前の役目だろ?」
「最初から掛けてるよ?1つの願いに1回という制約があるから、少しずつ形を変えて……LvもMAXだし、怪我や死は近付かないよ」
露骨な舌打ち。フレームなしの眼鏡が光り、眼光に険しさが増した。
「それって……《祝福》だろ?下級の魔法なんて役に立たないぜ!」
「そうだよ!上位変換の《加護》使えばいい……出し惜しみするな!!」
「重ね掛けは逆に危険なんだ。一歩間違えたら――!」
喉元に突きつけられる切っ先。エロエ・タドゥミール――“破妖の勇者”は仲間である筈のエロエ・ヴァイス――“白の勇者”に抜き身の剣を向けた。
「おまえの代わりに戦うんだ、戦力にならないのにな……あいつらと同じで役立たずだろ?」
「そうだよ!あんたはあいつらのお守りがお似合いなんだ」
「さっさと掛けろよ。あ…勇者が、勇者に殺されたらどうなるんだろう?」
エロエ・ジェメオース――“双生の勇者”が更に追い打ちを掛け、勇者の行動と成り行きを見守る騎士団ははらはらとしていた。
「分かった……でも、責任は持てないし忘れないで欲しいな。望んだのは“君達”だってことを――」
クルヴァーティオ――“魔境”に突入する3人の勇者を見送り、残った勇者は騎士団の方に向き直った。
「彼等なら大丈夫だよ?僕の務めは貴方達に被害が及ばないようにすることだから」
「“白の勇者”たる貴公がそう言われるならば、大丈夫なのでしょうが……」
声を荒げることもせず淡々と、控えめな笑みを口元に浮かべて目の前の青年は佇む。騎士団長は、クルヴァーティオに赴いた3人の勇者に憤りと落胆の溜息を胸の内で吐いた・・・。
題名変更しました




