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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第二章
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変わり果てし者

連続投稿

『何をしておいでですか?』

 その問い掛けに彼は顔を上げず、サラサラと筆記具――ボールペンを紙に走らせる。覗き込むと様々なアイテムが数字と共に綴られていた。

「目録……こっちは村の道具屋、こっちは宝箱とか報償。入場者増えたのは良いけど、整理しないと――普通の迷宮用も分けないとねぇ?」

『――お望みの品をお持ちしました』

 その言葉に顔を上げ、獅子吼の額輪を手に取った。

「見事な装飾品だと思ってたんだぁ、彼等のお土産に丁度良い」

 楽しげな魔王をアト・クローウンは満足して眺めティーブレイクの準備を整えていく。根を詰めすぎるきらいのある主人に、憩いの一服を提供するために・・・。

†††††

 がぁぁ! 潰されたカエルのような声を上げてギガントが倒れた。

 アルとタシャの2人は、水場を離れ《灯火》を頼りに大気の流れる方へ進んでいく。行き着いた先は洞窟で臨戦態勢を取りつつ抜けていくと、滔々と流れる河に出た。

 背後は断崖、2人がいた場所は洞窟の内らしい。河の畔には桟橋がありボロボロの船が停泊、頭上には蔦によって組まれた橋がゆらゆらと揺れて対岸へ……向こう岸は、深い鬱蒼とした森。目を凝らすと獣道が見えた。

「……」

「危険はあるが休息しよう……」

 見回すと千切れた蔦や板切れ、衣類の端切れなどが散乱しており、そこかしこに暖を取った後があった。

 パチパチと音を立てる焚火を挟み腹拵えと今後を考える。“栄光の御手”はバラバラになり、共にいるのはアルとタシャの2人だけ……幸いザックの中身は殆ど手付かずだった。

――銅貨2枚――。

 桟橋に泊まっている小舟は今にも壊れそうにボロボロ、柱に括り付けられた小さな革袋の横には朽ちかけた板切れにそう綴られていた。

 対岸には粗末な小屋が見え2人は革袋に銅貨を入れる。乗り込むと小舟は数分で対岸に着き降りると同時に戻っていった。

 小屋の中は無人。そこを離れ獣道に足を踏み入れ……そこからは、お馴染みの怪物のオンパレードだった。

 大蝙蝠(ヴェスペルート)大蛭(ヒルド)人喰蔦(ビンヴェルーヨ)殺人蜂(アヴェーロ)邪悪霊(マヴォナ・スピリード)にゴブリン。オークにオーガ――ポーションを使いつつ全てを排除し、深い森を抜けていると人の悲鳴が耳に届くようになった。

 折しも森の終着点に辿り着き、繰り広げられている3体のギガントの所行は、気分を悪くするのに充分過ぎた。

 喰われる者、踏み潰され握りつぶされる者、放り投げられる者――怒りにアルは《雷霆(ヴァルディア)》を、タシャは素養を纏わせた《地裂(アース)》を放ち、ギガントは殲滅された。

「す、凄いなぁ……」

 2人が屍体を火葬にし悼んでいると、おどおどした様子のローブの男が声を掛けてきた。

 尋ねもしないのに経緯を話しだしその内容に2人は驚くしかない。今いる場所は、スェターナ・サートの迷宮ではないのだから・・・。 


 


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