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とりあえず、二話目投稿
どこにでもあるありふれた酒場の暗がりに、溶け込むようにその男はいた。
「奢りだぜ?」
下卑た笑みを髭面に貼り付けるのは、馴染みの情報屋。面白い話があると、持ちかけてきた。
舐めるように果実酒の水割りを口にしつつ話し出したが、その顔には意地の悪い笑みがあった。
「ある貴族が酔狂なことに、銀10枚(¥100,000)でギルドに依頼を出した 内容は、従者1人残して全滅した冒険者の遺品回収……欲張りな連中がこぞって向かったが、全滅したそうだ」
「破格だな……お抱えか何かだったのか?」
冒険者はフリーなのが一般的だが、貴族や商人の専属になる者もいる。銅50枚(¥25000)も稼げれば腕がいいとされる冒険者に、銀貨を出すなど想像だにしなかった。
驚きを隠さず問えば――。
「一行に身内がいたらしい……助かった従者も3日余りでお陀仏だったと」
「なるほど……どこの迷宮だ?」
食いついたと内心ほくそ笑み、情報屋はグラスを飲み干すと告げた。
「アルヴァロ・マーロ――大樹海の新しい迷宮。生還者はいても攻略した者はいない……とびっきり奇妙な迷宮さ!」
†††††
「へぇ……攻略ねぇ」
「正確には、遺物の回収なんだ」
タレー・デュオは対面する魔技に告げた。
大樹海に出現した魔王の箱庭。そう呼ばれる迷宮で倒れた、ある冒険者の遺品回収を請け負ったことを。
「明日仲間と合流することになっている そうだな……占ってはくれないか?」
「……」
素か演技か――頭を掻く冒険者を魔技は見つめた。
冒険者達は大抵が不審と驚愕、時には恐怖を彼に向ける。しかし、目の前の中年男からそういった気配が一切感じられなかった。
「どうしたんだ?」
「変わってるね? この形を見ると怪しんで警戒するんだけど……」
確かに白尽くめの魔技は珍しいかも知れないが、それが警戒する理由になるのかが分からず、タレーは首を捻る。
「よく分からんな……まぁ、俺は迷宮攻略に人生を掛けているからなぁ、他に興味は無いな」
そう胸を張る冒険者を眺め、魔技の笑みが深くなった。
単なる魔技としか見ていないらしい。期待に胸を張っているのに笑みを更に深くし、形ばかりの占いをする下級2位の魔王だった・・・。