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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第二章
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「……どうだい?」

「消えたわ。あれは……」

 《光小精》に照らされた室内は調度品も何もなく、窓を背に佇む……良く出来た等身大の人形があるだけだった。

 一行が中に入ると扉が閉まり、振り向く間もなく足下が消える。重力に逆らえず落ちる彼等が放り出された先は食堂……カタカタと音を立ててテーブルが振動し、ナイフやフォーク、皿や包丁がタレー達に襲いかかった。

「盾よ…《光虹(ファイア)》!」

 虹色の光膜がポルターガイストを払い、料理道具や食器は只の道具に戻る。恨めしげな死者の声がタレー達3人の周囲を巡り、バンシーへと姿を変えた。

「リ、リリアは!」

 1人だけ2階に残ってしまった事実にタレーは唇を噛み締める。バンシーは死の先触れ……襲い掛かるそれに追われるようにして、食堂を出る。リリアは気になるが、安全の確保が優先された。

 ホールは埃と塵が積もって落ちた階段の残骸が散らばり、その中に佇む彫像はタレー達を睥睨し嘲笑の笑みを浮かべていた。

――――訪う者よ。我が道は、何処か……――――。

 ヒョウオォォォ……。ヒュウゥァァァァ……死者の声が縋るように纏わり付き、彫像の笑みが深くなった。

――――我は何者(ダレ)か?応えよ!!――――ゴウォッ!彫像の声なき問いに、闇よりも濃く暗い影が立ち上がった。

「エスト!」

 鋭利な大鎌を手にした死使は、《光虹》をたやすく切り裂き、エストは返された魔法により頽れる。ローブには血が滲み、顔色も蒼白に近くなった。

 ヴァルクのサーペンタインが火を噴き死使を穿つが、ボッと影が弾けるだけで効果はない。タレーは咄嗟に、魔道具による結界を発動させ、振るわれる大鎌は弾かれた。

 その間にポーションでエストを回復させ、ヴァルクは弾倉を闇属性全般に有効なシルバー・ブリットに交換した。

「狙うのあの像だ。援護を頼む!」

 タレーはレザーシールドで身を守りつつ、バトルアックスを手に彫像へ向かう。シルバー・ブリットが大鎌を破壊し、たじろいだように揺らぐ死使。

「よし! ぇ……?」

 首を傾げるヴァルク。前のめりに倒れた彼の、衣服の下から脂肪を断ち切られた筋肉が覗く。止めどなく血が溢れ止まることはない……知らぬ内に、背中を大きく切り裂かれていたという事実だけが、そこにあった。

「!?」

「避けて! 破裂せよ――《光球(オーヴ)》!!」

 エストの杖が光り球形を成すと膨れ上がり、閉じた瞼の奥にさえ光を感じさせて……廃館を内側から飲み込んで四散し、静寂に満ちた。

「くそ…っ!」

 死使は消失し彫像は佇むのみ。床にはエストとヴァルクの屍体があり、タレーだけが生きている。リリアはまだ2階なのか?階段が落ちたため、2階に上がるのは容易ではなかったが……リリアまで失うわけにはいかない。決意を新たにするタレーだった・・・。



 

 

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