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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第五章
140/141

哭鳴の白蝶宮

題名変更

『--見事だ』

 音のない声が脳裏に響いた。

 態勢を整えたまま睨み合うこと暫し……動いたのはほぼ同時だった。甲高い金属音と共にアクトのシャムシールが半ばから折れる。上体を左にずらし伏せるように見せかけて、無防備だろう背中に刃の欠けた得物(ソレ)を突き立て蹈鞴を踏んだところに蹴りをいれた。

 上体を揺らすだけで踏み留めた族王(アファ・サム)は、左手のシャムシールを背後に向けて横薙ぎする--。

 切り裂かれたのは頭布(フード)、零れたアクトの髪は宝冠のように煌めいて視界を奪う。乳酪(バター)にナイフでも入れるように、手応えも何もなくメレファ・ロームは驚きの表情を刻んだ(アファ・サム)の首を跳ねた。

『後継であることを認めよう--覇王アクト・クラトル そう名乗るがいい』

 倒れ伏す頭と胴が分かたれた屍体を見下ろし、安堵よりも後ろめたさを覚えるアクトだったが……紡がれた科白に息を飲んだ・・・。

†††††

『よくやったね? 美織』

 その科白と共に現れたのはスーツに身を包み、愛しむような笑みを湛える見忘れるはずのない男性だった。周囲は淡い光に溢れる、上も下も境も何もないどこまでも拡がる白い空間--召喚された最初の場所。彼女はそこにいた。

「パパ……じゃない!」

 思わず飛びつきそうになって踏みとどまると、美織は目元を真っ赤にして男性を睨み付けた。

「--世界と言ったわね? その姿は止めて!! もう騙されない!!!」

 美織(ユウシャ)の絶叫に、彼女の父親--篠頭勇司の姿をした“世界”はぶれるように、水に滲む墨や絵の具のように輪郭が崩れていった。縮むように背が低くなり比例するように横へ広がって……現れたのは1m位の大きさを持つベルベットの手触りが優しい、真っ黒な親指ほどの胡桃釦が愛くるしい瞳のテディベアだった。

『さて……こんなものか? クルヴァーティオ浄化は成功した、安心するといい--!?』

 大声で少女(ユウシャ)は泣き出し“世界”は困惑するしかない。首と胴が千切れそうになるほどの締め付けに、どうすることも出来ずそのままでいるしかなかった……。

                           ◆

『臆することはない、魔王は元勇者(ジョブチェンジ)した者ばかりだ』

 涙でドロドロになったテディベア--“世界”は、ごわごわの質感に頓着せず、ない首を傾げ淡々と告げた。

 『この世界(サウファ・アーレム)は迷宮がなくては成り立たない だが、管理者(マオウ)存在()なければ“理”が歪み崩壊へ至る--迷宮のクルヴァーティオ化は、その先触れだ』

「……魔王にならなかったらどうなるの? “理”が歪むってどういうこと?」

『歪みを修正するために“理”は生命を、足りなければ世界そのものを消費する--簡単に言えば終焉が訪れるということ そして、“理”は自壊し消滅してしまう』

 苛立たし気な視線を“世界”は彼女(ミオ)に向けた。

『浄化が成功したとは言え、このままなら砂漠(ガドル・パーディア)は砂だらけの不毛の地となり、“理”が修正する前に終焉を迎えるかもしれないんだ! 選択肢はないんだよ、勇者(ミオ)?』

     

 



思い浮かばない……

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