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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第四章
137/141

久々の更新……適宜修正しますが、文体や表現に多少の違いがあると思われます。

ご容赦くださいませm(_ _)m

「……っ!」

 鈍い音を立ててシャムシールとメレファ・ロームがぶつかった。

 ズシリと腕に伝わる衝撃は幻影とは思えぬほどに重く、撓めた膂力で返せば剣風が頬を掠めて数本の髪の毛が舞った。

 幻影かどうかは問題ではない--現実として彼に危害を加えることが出来るのだ、目の前の存在は。

『失望させるでないぞ?後継者たり得るならば--』

 正攻法というのか、シャムシールを手にする砂漠の(アファ・サム)の幻影は、アクトが体勢を立て直すのを待っている。2振りのシャムシールを下げて佇む様は砂漠の民特有の戦闘スタイルであり、肖像画そのままだった。

 アクトは一端手放していたシャムシールを右手に、メレファ・ロームを左手に握り胸元に構え呼吸を整えた……。

                           ◆

「はは……どう見てもアクションヒーローだよ」

 ジョン・ディーサは乾いた笑いと共に呟いた。

 実力が拮抗しているのか2人の砂漠の民は一進一退の攻防を重ね、どちらも引こうとしない。音声はないが、ぶつかる剣撃と気合いに満ちた息遣い--鬼気迫る迫力は鏡越しにも感じられ、程度の差はあってもそれは、ファンタジーやアドベンチャー系の映画やドラマを彷彿とさせた。

「そうねぇ、リアルってのは分かってるんだけど……」

 ほうと溜息を吐くジョン・ディーアル。

「こういう時に馴染めてないって、実感するわねぇ~」

 クネクネと巨体を揺する魔王イエウシュ・ゾナは科白を紡ぎ、拳1つ分を開けて横に並ぶ魔王アヴァレイソ・クイリスは苦笑しつつ同意した・・・。

†††††

 アクトが剣を交えているのとほぼ同時刻。砂漠の民“砂塵の鷲”族長にして新王都フロリネフの族王フロリネフ・サクルの長子ティーダは、ヴァスリーサ・マクル--砂漠の民の聖域で人ならざる存在(モノ)と剣を交えていた。

 迷宮フスーフィリ・カルクルのクルヴァーティオ化とガドル・パーディアの異変による影響は、彼に困惑と焦燥を抱かせ、叔父によるクーデター未遂が追い打ちを掛けた。生粋の砂漠の民ではない義弟の非凡さは、彼を凡人だと言わんばかりで、その差を縮めるのは困難としか思えなかったのだ。

 そうであっても、多くの犠牲を払って取り戻した聖域を二度と奪われぬように、(チチオヤ)は彼に全権を与えた。それに報いなければ、砂漠の民としての矜恃と自尊心を自ら汚すことになる。

 又、後継は白紙--叔父の言が確かならチャンスはあるはずだ。そう言い聞かせてヴァスリーサ・マクルに戻ってみれば--そこにあるのは累々と横たわり、息絶えた砂漠の民だった。

 砂漠の民"砂塵の鷲"は父親(フロリネフ)を長とする一族と家奴隷(アヴド)で構成されている。が、王となったことで砂王都(アディリザ)にいた砂漠の民と連なる者達が、聖域(ヴァスリーサ・マクル)を護ろうと義勇団を形成し一族だけでは手の届かない部分をフォローするようになった。

 義勇団はそれぞれの得意分野で才を発揮し、新王都フロリネフとは違う形でティーダが統括している。若造と侮られぬように己を律し公平であろうと努める……そのせいか、問題も何もなく彼は長と認められていた。だから、数日の間留守にしたのだ。

「こ…れは--っ!!」

 甲高い金属音を立てて、咄嗟に繰り出したクリスダガーが血に染まった爪を弾いた。その軌跡をなぞるように襲撃者(ソレ)目がけて横薙ぎした--が、仰け反るようにして避けられた。

『少しは楽しめそうだよ』

 音のない科白と共に襲撃者--血染めの衣を纏う可憐な美女がニッコリと笑い、猛禽よりも鋭利な長爪をペロリと舐める様は艶めかしかった。

「聖域を血で汚すとは……魔人であろうと報いは受けてもらうぞ!」

『まぁ! 存分に楽しませて?』

 小首を傾げ含み笑う人でない存在(モノ)を見据え、ティーダはシャムシールを抜いた・・・。

  

 


 

 


 


 


                                

 

  

 

活躍の場がないと気付き、気の毒に思いました(^^;)

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