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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第四章
136/141

砂妃の泉

題名変更

「お前……」

「……砂漠の民でないものは認められない、いかに優れようとも」


 ガドル・パーディアの聖域を取り戻し、青王都(ディアルト)を崩壊させた砂漠の民“砂塵の鷲”は、砂王都(アディリザ)よりガドル・パーディアの王権を移譲され、族長フロリネフ・サクルの名を頂く新王都フロリネフが誕生した。

 英傑と名高かったかつての砂漠の民、族王アファ・サムの再来だとの呼び声も高い新王フロリネフ・サクルは困惑していた。

 砂漠の直中に在る廃墟群(アトラール)と迷宮フスーフィリ・カルクルは、魔王不在によりクルヴァーティオ化してしまった。

 幸いにも勇者が召喚されクルヴァーティオ浄化に赴いている。できることはその成功を願うしかない……万に一つ失敗したときに、どうすればいいのか対策を練るための会合は、クーデターの首謀者を糾弾する場となった。

 重苦しい沈黙が王の間を包む。首謀者は新王フロリネフの実弟であり、長子ではなく養子が後継になる--それがクーデターの理由だった。

現在(イマ)重要なのはクルヴァーティオ浄化……又、族長を決めるのは民の総意だ」

「王様……いえ、兄上。本当に後継を決めていないと?」

「状況が変わったんだ。それより、この状況をティーダは知っているのか?」

(手酷い裏切りだ……)溜息交じりの呟きに、実弟エリフィム・サクルは苦笑するしかなかった。

 度量に優れ義理に篤い、公平であろうとするその様子は、正に族王アファ・サムの再来。彼の英傑の失敗は公平であろうとしたために、小さな悪意を見逃したことだと言われている。そこまで似なくても……その思いはずっと変わらなかった。

「知りませんよ。どこまでも真っ直ぐで、砂漠の民の誇りを規範とするティーダは--」

 そこまで紡いだ科白に彼は内心で納得した。

 失敗するのが分かっていたクーデター。それでも実行したのは、甥子(ティーダ)に統治するだけの器がないと確信したからだと……。

                  ◆

「叔父上が……?」

 人目を避けるように王都に帰還しティーダ--長子が耳にしたのは、叔父のクーデター未遂だった。

 自らが王権を奪うために(ティーダ)を担いで父親を追放し、養子(アクト)を殺そうとしたらしい。そんな馬鹿な!と地下牢へ行くと、牢の奥に座す人影があった……。

「--叔父上」

 戸惑うようなか弱い問い掛けに顔を上げると、泣きそうにも見える様子の青年がいた。

 父親譲りの精悍さを持つが物静かで優しげな印象の方が強く、どちらかと言えば参謀向きだとエリフィムは判じている。砂漠の民の誇りを規範とし、その価値観は父親以上に真っ直ぐ純化していた。

 砂漠の民として在るならば族長(トップ)として問題はない。しかし、王を頂く都を管理し民人(ハダル)を統括するには、役不足なのはハッキリとしていた。

「ティーダ……後継者は白紙だ。それを確かめるだけでも実行した甲斐はあった--精進しろ」

「なにを……」

「クルヴァーティオ浄化が成功した暁には、正々堂々と競い勝ち取れ!」

 


 



 

  

  


 


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