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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第三章
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「直接は無理なの。だから近くの王都(ミヤコ)に送って上げるわね?建都したばかりだけど、アトラールにとっても詳しいし--貴女も安心できると思うから♡無事を祈るわ」

 その科白を耳にサラーヴ・タヴットから転移し、行き着いた場所に強い既視感と目眩を覚えた勇者だった・・・。

†††††

 私は篠頭美織。

 勇者としてサウファ・アーレムと言う--神様は存在()ないけど魔法があって、迷宮があって、魔王が存在している異世界に呼ばれた。

 小説や漫画、アニメなんかでお馴染みのアレ。祝ってくれる人のいない独りぼっちの誕生日--15才になったその日に召喚された。

 何の前触れもなく足下が光って……それは、パパの時と一緒だった。

 目を開けると回りは白くて淡い光に満ちる、上も下もない変な空間で--ポンッ!って音と共に、亡くなった筈のママがいた。

 最も直ぐにママではないのを識ったけど……自らを“世界”と呼べと言った。

 そして、召喚された理由と成すべき事を教えられて、今回は特別だからと特訓を受けた。

 料理をするために包丁は扱ったことあるけど、剣とか弓とか槍とか……武器なんて扱ったことはない! 口喧嘩くらいで暴力は振るったことは--どちらかと言えば、振るわれる方。血を見るのも嫌いだし痛いことは大嫌い。だけど、慣れるものなのね?

 涙でぐちゃぐちゃになって身体中ボロボロになって……お墨付きを得て、勇者として降り立ったの。

 驚いて慌てたのは召喚した筈の人達、理由は--イレギュラー。正式な手順も希望も全くないまま、勇者が召喚()らわれたんだって……だから、準備が全然間に合っていなかったのよ、ねぇ。

 でも、勇者には違いないからって装備と武器を貰って出発した。

 最初に立ち寄ったのはドキュメンタリーや自然番組なんかで良く見たオアシスと天幕?族長って偉い人が出迎えてくれた。

 そこで3日ばかり過ごして族長さんを道案内に、どう見ても高層ビルとしか思えない廃墟群--アトラールって呼ばれる場所に到着して、迷宮の入口を探し始めたわ。

 見つけたのは4日目。何度も同じ所を廻ってたらしくて、通り過ぎてた路地に足を踏み入れたら何とも言えない嫌な空気の場所に出た。

 噎せ返るような鼻を付く異臭(ニオイ)に吐きそうになったけど--薄暗がりの闇にスポットライトが当たっているかのように人影が浮かび上がった。

 刀ってやつなのかしら?振り下ろそうとしてたから、止めるために飛び出した。

 一緒に来た傭兵さん達が一瞬にして死んじゃって、叫びたかった。でも、勇者だからこみあげる怒りと切なさを思い切りぶつけたの。

 魔技さんはトドメを刺されそうになっていた男の人を助けて、人影は驚いたように飛び退いた。

 間を置かずに攻撃しようとしたけれど滑って転んだのはイタかった--でも、でも……手元にあったのは人の首!その顔はパパだった!!

 ずっとずっと、会いたくてお話ししたくて……抱きしめて欲しかったパパ。

 突然頭を抱えるように蹲った人影は私の名を呼んで絶叫して……驚いて顔を上げたら、人影はパパだったの!何が…何なの?分かんなくてパニックになって……鈍くて耳障りな音が私を正気に戻してくれたけどぉ?魔技さんが庇ってくれたのは堪らなかった。

 でも、魔技さんは魔技さんじゃなかった。

 着ぐるみを脱いだみたいに人影が現れて--それもパパだったの!その後は高い高い空の上--サウファ・アーレム最高位の魔王のお城にいた。

 とてもコケティッシュで可愛くて、絶世の美少女。アンティークのビスクドールみたいに色が白くてぱっちりお目々--全身黒尽くめのゴスロリ衣装に身を固めた--古参に分類されるらしい魔王様だった・・・。


 

 



 

 

 

 

 

 

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