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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第三章
122/141

勇者再降

親子対決序章

神の概念がなく“理”が支配するサウファ・アーレムには、複数の迷宮がありそれぞれに管理者--魔王が存在する。迷宮と魔王はセットであるため、魔王不在--死が確定するとクルヴァーティオ化してしまい、浄化できるのは勇者--異世界の存在しかない……。

 アルヴァロ・マーロに匹敵する規模を誇るガドル・パーディア。砂漠のどこからでも見ることができる廃墟群(アトラール)が内包するのが、攻略困難な迷宮として知られるフスーフィリ・カルクルだった。

 管理する魔王ファウダ・ウルティオは完全な引き籠もりであり、その人となりを知る者はまずいない。それゆえ、魔王の異質さに気付く存在はなく、ガドル・パーディアの異変とイレギュラーな勇者召喚によって、迷宮のクルヴァーティオ化が明らかになったのだ……。

†††††

「うん!こうでなくっちゃ♡」

 最高位の魔王シャハルークス・エリラーは満足気に目の前の防具を眺める。ミスリル銀と白金(プラティナ)を用いた甲冑は耐性や強度、素養との相性が勇者に相応しい代物だった。

 しかし、身に付けるのは少女であって男性ではない。筋肉質だがほっそりとした長い手足にメリハリのある肢体、端整な顔立ちはハッとするほどに人目を引き--彼女が望んでも決して得られることはない姿形を持っていた。

 だから、無骨な甲冑をこの世界では異質で想像し得ない、彼女を含む魔王には馴染みのある--一見するとセーラー服としか思えない代物に変えた……。

                              ◆

『主人よ、戻られました--』

 迷宮での修行--無駄な動きの多い攻撃とムラのある命中精度を修正するための特訓メニューを一通り終え、彼女は転送陣に乗った。

 リン!小さな鈴の音と共に転送された先は絢爛豪奢な一室。魔王シャハルークス・エリラーの居城、背を向けている小さな人影が弾かれたように大きく振り向き……。

「無理はしてない?大丈夫?」

 黒一色のゴスロリ美少女の満面の笑みに、勇者--美織は頬を引き攣らせつつ頷く。アンティークのビスクドールを彷彿とさせる姿形を持って目の前に佇む彼女は、この世界(サウファ・アーレム)最高位の魔王として鳥さえ到達出来ぬ高み--上空を渡る迷宮(サラーヴ・タヴット)の管理者だ。

 迷宮フスーフィリ・カルクルに赴いた彼女(ミオ)は、勇者としての役目を果たす間もなくシャン・ディーイーの居城--サラーヴ・タヴットに転移させられた。

 彼女を転移させたのは魔人と呼ばれる存在(シャリ・アハ)。実力はあっても、間に合わせの武防具や粗が目立つ攻撃では……クルヴァーティオ浄化は困難らしい。だから、勇者仕様の武防具と攻撃の精度を高めるために招いたと言われ--魔人シャリ・アハは、美織が再び赴くまでの間、ガドル・パーディア全域に影響が出ないように結界を張っているのだと知らされた。

 素養を削った結界は尽きてしまえば消滅してしまう。又、サラーヴ・タヴットはゆっくりとサウファ・アーレムの空を渡り行くため……現在(イマ)は砂漠から完全に離れてしまっていた。

「あと、どれ位なんですか?一刻も早く浄化しないと、負担が大きいのですよね?」

「安心して良いわ。貴女に最も相応しい武防具も完成したし……もうじき到着するから♡」

 正義感なのか焦る勇者--美織を見つめ、魔王シャハルークス・エリラーはコケティッシュな笑みと共に小首を傾げた・・・。 

 

       

 

 

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