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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第三章
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「何があった?アクトの姿がないようだが……」

「長よ!アクト様はカディス王の暴挙を諫めております--自ら死を選ぶと!!」

 駱駝を駆り到着した砂王都アディリザに入った“砂塵の鷲”族長フロリネフ・サクルは、王都に満ちる空気がピリピリしているのに気付いた。

 一見すると軒を連ねる商店はどこも品物に溢れ、住民を初めとする人々が行き交い活気に満ちている。が、その影で疲れ果てたような者ややたら周囲を警戒する者、言いしれぬ不安に落ち着かない者などがそこかしこにいる……王城に入るとバタバタと走ってきたのは養子(ムスコ)の部下だった。

 焦りと困惑に満ちた様子に、予想していた事態かと身構えたが……発っせられた科白にギョッとし、族長フロリネフは王の間に向かった……。

                         ◆

「……カディス王様」

「脅威であったディアルトは滅び聖域も解放された。余にも、アディリザにも果たせなかったこと……余は老いた、後を継ぐに相応しいのは其方のみじゃ」

「ガドル・パーディアの異変は終息していないし、平穏とは言いがたい--新たな王が必要なのです。新たな時代に相応しい……」

 王の間に飛び込んだ族長フロリネフの視界に入ったのは、拘束された老王カディスと重臣達だった。

「長よ!お許しください。自死を止めるためとはいえ--如何様な罰もお受けいたします!!」

 跪き頭を垂れる養子アクトとその部下に怒りではなく安堵の息を吐いた。

 砂漠の民にとって砂王都アディリザは、英傑と名高いかつての族王アファ・サムの娘婿を建国の祖とする。砂漠の民にとってはヴァスリーサ・マクルと並ぶ心の拠であり、王様は尊ぶべき存在だった。

 ヴァスリーサ・マクル奪還は砂漠の民の悲願であり、青王都ディアルトの族王ロデ・ケイサルは倒すべき存在。砂漠に異変があったからこそ、成し遂げることができたのだし、砂王都アディリザの存在がなければ果たして……?

「--砂漠しか知らぬ者に治政の長たる資格はありません、ご再考を」

 拘束されたまま玉座にある老王カディスは、跪く砂漠の民に声もなく苦笑する。自死を塞いだのが、次期族長を名乗った青年であったのを除けば、展開する光景は彼の--魔人シャリ・アハの示唆通りだった。

「ならば、其方の養子を王にすればいい。彼のお陰でアディリザは治安を回復し人も増えておる……人を束ねるのにも長けておるのだ、良い案だとは思わぬかの?」

 その科白に驚愕する砂漠の民達に、老王カディスは好々爺のように笑った。

 ぱらりと音を立てて重臣の1人--パトゥーリ・オータの縄が解ける。それを合図に隠れていたらしい衛兵の槍が族長フロリネフ以下4人に向けられた・・・。

 

  

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