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……連続投稿
「まずい! 結界が……」
一行を護る結界に綻びが生じ始める。酸性の蒸気と粘液が魔道具を劣化させ、魔法の連続使用による衝撃波に耐久性が落ちてきたのだ。
結界が消えてしまえば全滅は決定的。怪物の反撃に対抗する術が失われる……だからといって、引き下がることは出来なかった。
この場を回避しても、魔王に頼る以外の脱出方法はない。魔王が気紛れを起こして助けてくれない限りは……。
「……次の一撃に勝負をかける。チャンスは結界の消失と同時だ」
ヴィクトールの宣言に誰もが無言で頷く。持てる力の全てを注ぐ。弱まっていく結界にタイミングを計りながら、最後の一撃に全てを掛けた・・・。
「晩餐の用意をしといて。彼等の奮闘を労いたいから」
楽しげにシアターを出る魔王。アト・クローウンはその背に一礼するとスクリーンを振り返った。
そこに映っているのは、もう一組の冒険者達。中々の奮闘ぶりだが、魔王その人の興味を引かなかったらしい。
『……』
アト・クローウンが姿を消すとシアターは完全な無人となり、延々と冒険者達の映像だけが流れているのみだった。
†††††
カシャン――! 魔道具が壊れ結界が消失した。
「光擲槍!!」
「雷漸撃!」
「滅せよ――聖浄の光輪!!」
「焼き尽くせ! 燦焔柱!!」
「集え……死の舞踏手よ!」
それぞれが最大の攻撃を繰り出した。
再生能力を鈍らせれば、全滅する時間を引き延ばせる。決定的ではなくても、明確な一撃を加えれば良しとしよう――ポーションで回復しつつ更なる攻撃を繰り出す一行。
立て続けの攻撃に怪物の動きが鈍ってきた。
再生が間に合わなくなりつつあるのか、後じさり触腕の動きにスピードがなくなってくる。どれ位の時が過ぎたのか……怪物が倒れ動きが止まった。
しかし、完全に倒せたわけではないのは、はっきりしている。鈍ったとはいえ再生しているのは目に見えて確かなのだ。
「――これ以上は無理だ」
全力を出し尽くし5人は死を間近に感じる。声のない咆吼と共に怪物は起き上がった。
再生途中とは言え、何をしても死なない怪物相手に対抗する手段は切れている。目的が果たせなかったのが、心残りだが仕方ないと割り切って――――。
「絶対防御」
キ…ンッ! 空気が切り替わり、重力が消えた。
「お疲れ様! 真っ向勝負でこれだけ出来るんだから、招待した甲斐があったね?」
場違いな脳天気とも言える科白に振り向くと、目と鼻の先に佇むラヴァン・ソルティス――魔王がいた。
満足げな笑みが口元にあり、前髪で全く見えないがその眼差しに愉悦があるのはたやすく想像できた。
「あぁ……内も外も攻撃は無効だよ? というより、例外なく魔法も物理も封じられるんだ」
そこが難点だよねぇ……肩を竦める魔王に、5人は応えることが出来なかった。安堵と疲労、徒労と絶望に極限まで追い詰められていた為に・・・。




