アディリザの長い日
一寸切り替(^^;)
「本当に滅亡したのか?」
信じられないと若干15才の少年王エディ・レイラーンは呟いた。
王都エディルは砂漠との端境にある。繁栄の礎であった迷宮がなくなってからは衰退の一途を辿ってはいたが、隊商氏族がガドル・パーディアに入るための拠点であり中継地としたことで、都として位置づけられている。
最大の交易相手は青王都ディアルト。交易とは名ばかりの搾取とガドル・パーディアの異変によって亡国の危機に陥っていた。
だから、その報せは歓喜と戸惑いをもたらした。
「聖域が解放されたのを機に滅ぼされたそうです……それから、勇者がクルヴァーティオ浄化に赴いているとの情報があります」
「…っ!異変は、クルヴァーティオ化だったのか?」
盛大な溜息と共に玉座に背を預ける若き王に、王政補佐の宰相ソートゥリアはゆっくりと頷いた。
「……交易は砂王都、元々の相手だからいいか?」
「どうでしょうか?王はかなりの高齢だったと記憶しております。それに、ディアルト滅亡は唯一の砂漠の民
によって成し遂げられたとの報告がありましたゆえ--もう少し様子を見るべきかと」
宰相の科白を思案し少年王エディはその提案を了承した。
砂漠の迷宮フスーフィリ・カルクルのクルヴァーティオ化が、本当に勇者によって浄化されるかは保証がない。又、青王都ディアルト滅亡させたのが、街の民と揶揄される砂王都アディリザの意向でないとすれば……。
「焦ることはないか--暴君がいなくなったんだ、エディルの立て直しを早急に図るぞ!手を貸してくださいね。宰相……いえ、叔父上殿」
†††††
「様子はどうです?」
「カディス王は寝室に引き籠もったまま姿を見せず、重臣達も様子がおかしいらしい」
砂王都アディリザに常駐させている彼の養子--アクト・クラトルが送ってきた書簡に目を通し、疲労の滲む科白を“砂塵の鷲”族長フロリネフは吐いた。
高齢であり玉座に背を預けていた姿を思い出せば、容易く想像はつく。もう少し持ってくれれば……老王カディス・ロウゲの懇願に明確な答えは出せてはいない。先延ばしは想定外の事態で出来なくなり……。
「謁見するしかないようだ……守りは頼むぞ」
書簡をクシャリと握り潰し駱駝を駆った、族長フロリネフ・サクル以下3名の砂漠の民だった・・・。