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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第二章
118/141

--くっ!--。

 喉の奥で呻き刀を振るうが、魔人と名乗るだけあって致命傷を与えられない。“彼”--かつての勇者が持ち得なかった闇属性の魔法が、剣撃を受け止め弾いてしまうのだ。

『--《魔影触蛇(オプス・プロカーム)》』

--!?--。

 《闇影盾》を斬るのではなく突き壊して手応えを--感じたと思えば、闇色の触手がうねうねと“彼”に絡みついた。

 斬り払うが触手は再生し数を増やしてを捕らえると、縒り合わさって闇色の巨蛇となり……ぱっくりと口を開けて呑み込んだ。

 本物の蛇が獲物をゆっくりと締め上げ消化するように、“彼”から思考を奪い、焼き付けられた記憶は漂白されたように削られて……。

『……壊れぬか』

 フィギュアの、記憶に沿ってパターン化された攻撃は、素養を纏わぬのを差し引いても脅威にはなっていない。2度ばかり刃を交えただけで次の攻撃は予測が付いた。

 魔人になったことで、純度を高め強靱化した素養を駆使すれば、宣言通りに翻弄するのは容易かった。

 しかし、人形ゆえに頑丈極まりなく気を失うことも疲れることもない。倒されても起き上がり攻撃してきた。

 生あるものならば誰もが恐れるだろう死を纏う闇さえ命を奪えない。出来るのは勇者たらしめている記憶を奪うことだけだった。が……そう上手くいかないらしかった。

 さすが--魔王が作り上げたフィギュアだけのことはある。と、小さく嘆息する魔人シャリ・アハだった。

--ぅ…ゆ、勇者に……逆、ら……があぁぁ!--。

 闇色の巨蛇は不意に藻掻くようにのたうち回り、皹が音もなく縦横無尽に走って--咆吼と共に塵と化した。

 素養ではない覇気--武防具にこびり付いたかつての勇者の残滓に、魔人シャリ・アハは虚を突かれる。その隙を狙って繰り出される三段突きを《魔影囮(オンヴローギロ)》で躱し、変異植物の1つとなった覇王樹(サヴァール)の針葉--《魔腐針(マヴラ・ドゥ)》を放った。

--効、く、ものかぁ!--。

 素養ではない覇気が《魔腐針》は無効にし、凄まじい剣風が《魔影囮》を切り裂いた。

 優位に立っているように見せかけているだけで、初めから不利なのは魔人シャリ・アハ。些細なものでも蓄積すれば致命傷になり得る……最大の痛手は最初の攻撃で器--肉体の大部分を失ったことだった。

 そして、刃を交える度に魔人たらしめている素養は削られ、容赦なく着実に消費され続け、回復不能な状態にまで追い詰められていた。

 勝機と見たのか覇気を纏った人形勇者の魔剣が迫り来る。限界と言っていい魔人シャリ・アハに躱す術は全くなかった。

『さすがは上級2(シャン・ディーアル)の魔王様だ--人形であるのが惜しいな』

--消、え…ろぉぅ……!!!--。


 

 


 

 

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