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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第二章
116/141

魔人対勇者

題名変更予定……とりあえず

 ズッ!ザアァ…バシュ!グツ--ぐちゃり…ぶ……っん!!

 肉を押し潰し切り裂き、骨が腱が重力と共に分断される。全身の皮膚感覚が、尋常ではない衝撃と灼熱の激痛を捕らえ絶叫を--喉が潰れているのか声は出なかった。

 ヒューヒューという呼吸音は彼のものだろうか?やたら耳に残るそれを振り払おうとするが身動ぎ1つ指一本1つ動かず……走馬燈なのか、彼の脳裏にこうなったときの経緯が過ぎった……。


 魔王を殺したらしい自称勇者の視線1つで、彼--カターク・ティスは床に叩き付けられ全身の骨という骨、筋肉という筋肉がボロボロになったのを自覚した。

 彼の仲間もこの時に一瞬にして血と肉片を撒き散らして物言わぬ屍体となった。

 本物であろうとなかろうと自称勇者は、獰猛で危険な存在に違いない。が、どうすることも出来ず死を待つしかなかった。

 意識は混濁し視界は明滅してブラックアウト寸前、僅かな感覚に目を開ければ……血と人脂に曇る刀の切っ先があった。

「--諦めてはなりません」

 誰かの声を聞いた気がした。

 ふわりと身体が浮く感覚を捉え今度こそ死ぬんだと--そう思ったのに、想像しえない凄まじい重力と激痛が降りかかった。

 気が狂ってしまいそうなのに狂えず……朦朧とした意識は覚醒し、研ぎ澄まされた皮膚感覚が今行われている出来事を、しっかりと捕らえていた……。

                           ◆

--ば、かな……--。

 突然乱入し、息を付かせぬスピードで迫ってきたグレートソードを受けた“彼”は、決して忘れることのない最愛の娘、美織の面影を色濃く残す少女に戸惑い……額が付くほどの距離まで接近した瞬間に、愛娘だと理解した。

 “彼”と同じように勇者として召喚されたに違いなく、世界への怨嗟が募っていく中、庇うように立ちふさがったのは痩身の冒険者。苛立ちと共に切り捨てれば着ぐるみか何かのように、中からずるりと人影が現れた。

 顔を上げた人影は信じられないことに、作り上げたフィギュアでも勇者でもない篠頭勇司(カレジシン)。優しく蕩けそうな声と笑顔で勇者--美織をどこかへ送ると、残していったグレートソードを手に取った。

『出ることは叶わぬ--!?』

 絶望に駆られて振り下ろした刀はグレートソードを叩き折り、重力のまま右肩から真っ直ぐに割った。が……左脇を重く鋭い衝撃波が襲い、たまらずに飛び退いて“彼”は恐慌に陥った。

 何故なら、この場にいないはずの勇者--愛娘、篠頭美織がにっこりと笑って佇んでいたのだから・・・。 


 

 



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