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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第二章
114/141

勇者邂逅

親子対決間近……題名変更可能性あり(^-^;

 廃墟群--静寂に満ちた高層ビル群に足を踏み入れた一行は、異世界の少女--勇者を除き落ち着かなかった。

 耳に付くのは足音と息遣い……一行が出す音だけで生き物の気配は皆無。見上げる空が青く澄み渡っているのに反して、高層の影が光を遮り空気はひんやりと冷たかった。

 無機質な高層の建造物は、圧倒的な威圧感を持って彼等を押し潰そうとしているかのよう。切り取られたような青空は、決して手の届かない遙かな高み--光に触れることも叶わず、影の奥底で朽ち果てていくような感覚に襲われ、知らず精神が疲弊していくのだ。

 真っ直ぐに続く大通りと交差する幾つもの小通りは、降り積もった砂で足裏にザラザラとした感触を残し、足跡がくっきりと残る--壁に目印になる傷を付けながら進んでいると、急に視界が開けた。

「!?」

 息を飲んで周囲を見回すが、煉瓦敷の丸い広場にいるのは彼--聖職者シャル・ササンだけだった。

 勇者である少女も、雇い入れた魔技も傭兵もいない。《気配探知》にも反応はなく--彼1人が、そこにいたのだ。

 バッと踵を返し通りに飛び込む。一行の名前を呼びつつ目印を頼りに移動するが、出る場所は丸い広場だった。

 グシャ…ッ!絶望に膝を付き天を仰いだ瞬間、心臓を鷲掴みにされ握り潰される感覚に襲われ……脳裏に響くノイズが、彼が認識できた最後の代物だった……。 

                           ◆

「眩しい--」

 小さく呟いて一行は通りに戻る。円形の広場は遮るものない陽光に晒され、煉瓦敷の石畳は焼かれて陽炎を立ち昇らせ、広場の空気だけが熱を帯びていた。

「--何の気配も感じられん!」

「反応がない、魔人は本当にいるのか?」

 《気配探知》《魔力感知》にも反応がないのに困惑しつつも、魔道具の結界を張る。思いの外、体力を消費したのか重い疲労感に襲われ……小さな吐息を漏らして勇者は、聖職者シャルの肩に頭を寄せた。

「我々は魔人の手の内にある……油断は出来ませんが、少しぐらいなら休息しても問題ないのでは?」

 聖職者の提案とぐったりとする勇者の様子に頷き、ハーブティで人心地付く一行だった・・・。

†††††

(パパ--!?)ビクリと身体を震わせて目を開け、跳ね起きる。慌てて見回し……一瞬の間状況判断に戸惑う。彼女がいるのは閑散とした路上。高層ビル群に囲まれた通りで、傍らには3人の男性が仮眠を取っていた。

「おや、寝過ごしましたか?起きて--」

「大事ないようだ!」

「少し肌寒いぞ」

「大丈夫ですか?勇者様」

 小さく頷いて勇者--篠頭美織(ササガミミオ)は広場の方に視線を向ける。陽が傾いたらしく広場は赤光に染まっており、見上げた空は藍色に暮れ泥み始めていた。

「行きましょ!」

 気合いを込めて宣言し、勇者一行は迷宮フスーフィリ・カルクルの入口を探すべく歩き始めた・・・。

 

 

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