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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
第二章
110/141

 ガドル・パーディアの交易の拠点でもある青王都ディアルト。

 砂漠の盟主を名乗る族王ロデに逆らえる者は先ずいなかった。

 気紛れと退屈が彼の指針。機嫌次第でもたらされる運命は決まる……それ故、財ある者や地位がある者が、こぞって献上品を捧げるため、彼の王都は繁栄をし続けていた。

「ほう……遠方の美姫か」

 嬲るような視線が注がれ身動ぎする。左右にいるのは奴隷商人、背後には商人と4人の部下が控えており、逃げられぬように後ろ手に縛られ跪かされていた。

「確かに美しいな。だが……男は好かぬ!」

 一瞬にして奴隷商人--“猛き角蛇”の後継者2人はシャムシールの餌食となった。

 ヴァスリーサ・マクル奪還のために商人に変装し、玉座の間近まで辿り着いたのに目論見は外れ槍を構えた衛士に取り囲まれ……王の間は剣劇の舞台となった。

 飛び散る鮮血がそこかしこを染め、肉を切り穿つ音が数回続いて止む。屍体は衛士1人と砂漠の民6人--美姫に化けた若者と老いた者の2人は、隙を突いて逃げおおせたらしい。

 さも楽しげに笑い族王ロデ・ケイサルは玉座から降り吼えた……。

「口実を与えてくれたのだ。兵を出せ--殲滅だ!」

†††††

「馬鹿なことをしたな?“猛き角蛇”は終わりだ--」

 落胆を滲ませ“砂塵の鷲”族長フロリネフ・サクルは、首と銅を切り離された屍体に向き合う。青王都ディアルトが興されて以降、砂漠の民は潰され続け残ったのは2部族のみ。“猛き角蛇”は3つの部族の生き残りが集合した部族であり、どちらかと言えば強権的だった。

 そのため、家族単位の“砂塵の鷲”は臆病者扱いにあり、砂王都アディリザの権威は蔑ろにされつつあった。

「生きています!」

 小さく呻きながら震える手が砂を掴み、動かなくなった。

                          ◆

「あれを息子にする、異論はあるか?」

「ディアルトはそう簡単に崩せない。アディリザを守るのが先……最もベストの時を待つのが最善でしょう?」

「馬鹿息子共々残らなくて良かったですよ、本当に」

 拾われた毛色の違った少年は、5年の間に見違えるように成長しカリスマめいた雰囲気さえ漂わせる。見た目に惑わされたのか“猛き角蛇”の者達は、彼を正当に評価していなかった。

 砂漠に必要なのは不屈の精神と強靱な意志であって、肌の色や血筋に価値はない--評価が正しければ全滅は免れた可能性もあるし、取るべき手段は幾らでもあったはずなのだ。

 それゆえ、族長フロリネフの決定は部族の総意として効力を持ち……10年の雌伏の時を過ごすことになった・・・。

 

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