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迷宮は世界と共に  作者: 北落師門
新章
106/141

魔王暗殺

題名変更の可能性あり

「これが最後か--」

 その呟きを聞くものは存在しなかった。

 彼の仲間は全滅し、彼自身の命も僅かの時しか残ってはいない。冒険者にとって死は常に傍らにあり、冒険中に死ぬことは冒険者冥利に尽きる……そうは理解していても、今迎えようとしている死は理不尽でしかなかった……。

                            ◆

「え……?」

 彼等は状況が飲み込めず戸惑っていた。

 フスーフィリ・カルクル攻略のために、変貌した砂漠を進み廃墟群へ到達。廃墟群の主シャリ・アハと遭遇し全滅しかけた。

 全滅を免れたのは、迷宮内と思われるトンネルの中にいつの間にかいたからで……現れたマウト・セヴェリオを倒しながら、出口を求めてトンネル内を疾走した。

 途切れることなく現れるスケルトンをローテを組んで殲滅し、息を付く間もなく運ばれた先は--果てがないような闇に沈む空間だった。

 クスクス…フフフ……クスクスクス!アハハハッ!少女のものらしい笑い声がどこからともなく、数を増して響き渡り彼等--“豪腕の獅子王”の神経を逆撫でした。

 お互いに背を預け戦闘態勢を取ると、合図となったかのように小さな人影が飛びかかってきた。

 どれも同じ髪、同じ顔、同じ衣装--外見に惑わされるような素人でも初心者でもない、上級クラスの冒険者であるカターク達は惑わされることなく、容赦なく倒していった。

 気が付けば周囲にあるのは、壊れた作り物の少女(フィギュア)。累々と床を埋め尽くし、その眼差しは彼等を糾弾するかのようだった。と……。

 強烈な光が闇を切り裂く。一筋のスポットライトが当たっている、キラキラと輝く絢爛豪奢な玉座に座しているのは、普通に考えて魔王--迷宮の管理者に他ならなかった。

 が……座しているのは本当に魔王なのか?

 目を凝らすと黒衣の裾が広がりその間から靴先が覗いている、肘掛けからずり落ちたような手は血の気を失い傍目にも青冷めて見えた。

 確かめるには近付く必要があったが、冒険者ではない何者かの背が彼等--“豪腕の獅子王”の動きを封じていた。

--魔王ならば死んだぞ--。

 ゴキリ…!耳障りな音が反響し背筋に怖気が走った。

 ボタッ…ビシャッ!!噎せ返るほどに鼻を付くのは、鉄錆びた濃密な異臭。磨き上げられた石の床を舐めるように這うそれは、仄かに湯気を上げ温もりを残しているらしい……。

 背を向けていた何者かがゆっくりと振り返るのと、黒衣の持ち主が玉座から転がり落ちるのは、ほぼ同時--。

「ギャッ!!」

 ゴゥガアァァ……!空気を振るわせて雷光を纏った“雷牙蛇(セプスヴロンデ)”が何者かに襲い掛かった。

 突然の暴挙に唖然とするが、赤魔技フラウ・ワルナは彼の使役獣(ペット)と同じように、縦に切断される。血と臓物を撒き散らして物言わぬ屍体となった仲間に戦慄する一行。

--勇者相手に勝てると思うのか?--。

 白魔技リード・ヴィータは堪らず顔を背け、剣闘士トラウル・ニュートは抑えきれずに嘔吐し、黒魔技ヒア・コーエルは腰を抜かして下肢の間を濡らす。魔拳闘士カターク・ティスは“豪腕の獅子王”リーダーの矜恃から、近付いてくる何者か--自称“勇者”を睨み付けた。

 その手の中にありポタポタと滑る雫を垂らす--魔王ファウダ・ウルティオの首を無視するように・・・。

 

 

       

 



 

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